ニック・ホーンビィ「アバウト・ア・ボーイ」(新潮文庫、森田義信訳)

イヴかよ。ノーパン喫茶かよ、と一部の人にしか意味不明で、なおかつ呆れられる連想はともかく、クリスマス・イヴ向きの名台詞/名文句なんて、ボンクラは持ちあわせてねぇんでござんすよ。
「ハイ・フィデリティ」の作者による本作は、ヒュー・グラントのボンクラぶりがとにかくサイコーな映画版の出来がメチャイイわけなんだが、原作ならではの味わいも捨て難い。主人公と仲間に「絆」を与える事件が、かのカート・コベインの自殺というロックマニア泣かせの展開が妙味なのだ。映画版のきれいなまとめ方のほうがすっきり快感ではあるんだが、そのへんあるいは米国人監督らしく整理されすぎな面もあり、原作に漂う英国ならではの屈折感覚が欲しい向きにはオリジナルから楽しんで頂きたい気もあって。ネタバレになるから詳細は書かないけどね。