ポール・ニューマン『動く標的』(ロス・マクドナルド原作、ジャック・スマイト監督)

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ハーパーのダチ「ダメだ、私には撃てない!」
ハーパー「わが友よ……」*1

ロスマクことロス・マクドナルドはなんつっても題名が素晴らしい。題名どおりの展開をしちゃうハナシも多いんだが、なんつうか、物語が最終的に帰着する地点のイメージ設定が巧すぎるんだよな。「世界は悲しすぎる」ってコトを、オレみたくボンクラに教えてくれるのが、ロスマク作品だと思う。ジョン・ゾーンあたりはインタビューでボロクソにけなしてたりしたけどね。マイク・ハマー好きにはウケない面があるみたいね。
で、ポール・ニューマン主演、リュウ・アーチャー転じてハーパーと改名しての映画版なんだが、実はコレ、原作以上の傑作じゃないかって。ネタバレになるので、上記のやりとりの解説は避けるが、ハメット&チャンドラー以来オプものにはありがちな錯綜した設定をうまく簡略化、映画として面白く見せることに成功してるんじゃじないかって。ポール・ニューマンの内にひそかに熱さを秘めたクールガイぶり、たまんないよね。マジなハナシ、ポール・ニューマンフィリップ・マーロウもあり得たんじゃないかな? もちろん、キャラ的にはリュウ・アーチャー向きではあるんだけどさ。
ちなみに、コレも絶対、吹替で見るべき。字幕版だと端折りが多くてついていけないかもよ。もちろん、今回のセリフも吹替版からだぜ! ニュアンスを見事に言い当てた名場面と思うね。『ロング・グッドバイ』の焼き直しじゃねぇか! なんてツッコミは、なしね。
ゴミ箱からフィルター拾って、出がらしのコーヒーを入れる名場面、忘れ難い。サークル仲間の盟友が学生時代に撮った8ミリ映画にオマージュを捧げたシーンがあって、仲間内でそれがわかったのはオレだけだった。そんな想い出もある。

*1:追記:04/09/20深夜、日本テレビで放映されたので最後だけ見たら、ココ、ふたりとも「Oh, hell...」とつぶやいていた。で、字幕では「私には撃てない」「だめだな」。いずれにせよ、オリジナルにやはり見事なセリフがあったってことだな。吹替版のほうがかなり踏み込んだ体で、見事にこのシーンの主題、「男の友情」を描き切っていると思う。同じ言葉ではあっても、まるで違う万感の想いを込めて嘆声あげる、かつてのマブダチふたり。泣かせるぜ!