「ソルマック!」だの「くいしん坊万才!」だのと紹介されているが、オレにとっては渡辺文雄と云えば<邦画きっての切れ者悪役俳優>以外、あり得ない。
大島渚(多々)・鈴木則文(『現代ポルノ伝・先天性淫婦』)・三隅研次(『子連れ狼・子貸し腕貸しつかまつる』)等々、佐藤慶と並ぶ煮ても焼いても喰えねぇ、頭キレキレな極悪人ぶりがサイコーだった。つうか、どんな役でもただの悪人にしか見えなかった。あのいかにも抜け目ないギョロ眼見ればわかるじゃんって。しかも、東大卒でさらに元電通社員でっせ! ロクなヤツやあらへんって!*1
オレたち映画仲間のあいだではマブダチ・佐藤慶と<フミヲ&ケイ>、略して<フミケー>てなコンビ組んで、世間に「悪」のナンたるかを知らしめる、チョーいやげ親爺として売り出すべきだッ! なぞと盛り上がったモンだ……いや、いまつくったんだが。
ありし日のヨッパライぶりを堪能したい向きは、大島渚『新宿泥棒日記』をごらんなせぇ。マジで酔眼モーローとよく回る舌でヨタ言しゃべり散らしてるから<記憶違いならゴメン
ちなみに、悪役俳優は実際会うとイイヒトが多い…なんて俗説があるが、フミヲ氏に限っては嬉しくも(?)まんま悪人だったらしい。箸のあげおろし、お茶の入れ方ひとつにこまごまとやかましく、現場スタッフに嫌味かまし、説教にウンチク延々と垂れまくるなど、文字どおり悪役ぶりを発揮したと聞いている。エラいッ!! それでこそ真の悪役、いや悪人! さすが<フミケー>! あの世でもきっと永遠に悪役/悪人、救われぬコトこそかの人の偉大さと見たり! イイ役者だったよ、ホント。
最後に、オレの好きなフミヲ名演。
「ふッふッふッ、さすがは拝一刀。よくぞそこまでわれらがことを。かくなるうえは、死んでもらうしか、ないな?」*2
from『子連れ狼・子貸し腕貸しつかまつる』