ジェームズ・コバーン『夕陽のギャングたち』(セルジオ・レオーネ監督)

マカロニ大明神セルジオ・レオーネのいわゆる“アメリカ”三部作の中核を為す究極の男泣き映画。コバーンが要所要所で吐く、キメ台詞(英語では「Duck Your Sucker !」、イタリア語では「ジウ・ラ・テ〜スタ、コリオ〜ネ」)が題名になってるってのがニクい。手前味噌ながら、2年前の初DVD化の際、某所にのっけた紹介記事を転載(当該雑誌はすでに休刊)。

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 時は1913年、革命下のメキシコ。山賊のフアンは元IRAの闘士で爆破のプロ、ジョンと出会う。ジョンの手を借り、フアンは長年の夢だった大銀行襲撃に乗り出すが、地下金庫にはなぜか政治犯が! 思わぬことで革命の英雄になるフアンだが、政府軍に家族を虐殺され、捕らわれの身に。フアンはジョンに救出され、革命軍に加わるが、運命がふたりを引き裂く……。
 監督は巨匠セルジオ・レオーネ。マカロニ・ウエスタンの生みの親たる彼が、三部作『荒野の用心棒』(64)『正・続 夕陽のガンマン』(65・66)に続いて世に放った、「アメリカ三部作」とも呼ばれる『ウエスタン』(68)『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)の中間に位置する重要作だ。
 主演は『夜の大捜査線』(67)等の名優ロッド・スタイガー(02年死去)と、『荒野の七人』(60)『大脱走』(63)等のジェームズ・コバーンのコンビ。「スピークラーク」のCMなど軽めなイメージがあるコバーンだが、『ビリー・ザ・キッド 21歳の生涯』(73)あたりで見せた重厚さもうまい具合に出ていて一世一代の名演技。ダイナマイトに点火するたびに吐く名台詞「伏せろ、バカ」(原題より)にはシビれるばかり。
 映画音楽の巨人エンニオ・モリコーネ自身の指揮によるスコアも絶品。独特のスキャット(「♪ション、ション」)は一度聴けば耳から離れない。この至高の音楽に乗せて、はかない「夢」で結ばれたふたりの男の友情が、悠然と、荘重に、おかしくもやがて哀しきタッチで綴られる。爆破シーンに流れる詩情もたまらない。哀しみを魂に永遠に刻み込むラストカットに、野郎なら静かにただ涙せよ!