『村の写真集』

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先日ありがたくも試写を見せて頂いた邦画新作。監督は『あしたはきっと…』『ドッジGo! Go!』の三原光尋。各国映画祭で評判を呼んだり、キネマ旬報ベストテン入り等、話題をまいてしかるべき良作。近年定着したフィルムコミッションの一環の作品で、ロケ地である徳島先行公開。東京等各地の公開はまだ未定の模様。公式サイトは<アンテナ>に入れたので、情報はそちらでもどうぞ。
ダムの底に沈む運命に揺れる山村で写真屋を営む高橋研一(藤竜也)は、村役場の依頼を受けて、村の記憶を永遠に残すべく発刊する写真集のため、村人を記念写真におさめることに。彼は東京でカメラマン修行をする息子・孝(海東健)を呼び戻し、助手を任せる。寡黙で頑固者な父親と折り合いの悪い孝ははじめ抵抗するが、黙々と写真を撮り続ける父の姿に、やがて心打たれはじめる……。
近年、渋みを増した個性派俳優・藤竜也の、寡黙ななかに決然たる意志を秘めた、古武士のごときたたずまいが見事。それを真っ向から受けて立つ、新人・海東健の熱演にも拍手。毎晩、監督に演技の相談を自らもちかけて困らせたと伝え聞く、今日び珍しいほどの生真面目さのゆえんか?
脇を支える甲本雅裕(意外な妙演!)、そしていまや日本映画の顔たる名優・大杉漣のつつましげなポジショニングもいい味わい。実は地元出身者という大杉漣が随所で見せる、演技だけではなかろう感慨深げな表情もチェックポイントかも。
女優陣では孝のけなげな妹役に宮地真緒、姉役になんとなんと、原田知世。ここぞ、という場面に登場するかつての角川ヒロインの存在感、さすがである。淡路島出身の宮地真緒は台詞回しがいちばん自然なだけに、『まんてん』とかよりずっとイイ感じ。
作品内容的には中国映画近年の話題作山の郵便配達の徳島・山村版といった趣きあり。徳島県池田町・山城町・西祖谷村などでロケーション撮影、要所要所で映し出される風景は美しく、どこか懐かしい。山紫水明の国、わが日本にも、大中国に勝るとも劣らぬ、いまなお心を打つ風景が残っていることを思い知らされる。
おそらく、三原監督の現時点での最高傑作であろう。ストレートすぎるお話どおりに、素直すぎるまでのゆったりムード。そしてこの監督ならではの持ち味と言うべき、ケレン味ない演出がすんなりハマり。藤竜也の存在感と静かな山村の風景を眺めているだけでも満足できるんじゃないかと。
ベタといえばベタな内容かもしれないが、オレ自身はてめえの好き嫌いだの、作品の完成度だのを批評家然とごにゃごにゃ言う類の映画じゃないな、と。田舎にふっと遊びに行ったら、知らないおばあさんから山菜料理をふるまわれて、美味しく頂いたような気分になりました。なんとも言えず、いじらしいシャシンですよ、実際。
オレ自身はどっちかつうと邦画には採点辛めな人だけど、こういう素朴な、製作サイドの真面目さが伝わってくる映画は応援したいです。映画そのものの完成度とか、映画作家の心意気をとにかく見たいなんてコアな映画フリークにはやや物足りないかもしれないけど、なんとなく心あったまる、はたまた癒されるドラマが見られたら嬉しい、という方にはオススメできますな。藤竜也ファンと徳島出身の方なら、とりあえず必見と言っときましょう。
あ、あと、『あしたはきっと…』のフッキーこと吹石一恵タンがゲスト出演してます。試写にも来ていて、上映中ちょっと泣いたらしく、うさぎちゃんみたいにやや目が赤く。すらりとしていて、チャキチャキした関西弁、アイドル然と可愛いというより、しっかりオトナな美女。で、スッキリサバサバしててカッコいい感じ。オレ、ますますファンになりました。
そして原田知世サマは……美しかったです、ハイ。女優さんって実際に見ると、大抵予想以上に綺麗だったり、というのはわずかな経験上ながらも知ってたコトだが、いやはや(感嘆)。思ってたより小柄でほっそり、立ってるだけでその周辺だけ、なにやら空気が澄んだ感じで全然違うんですよ! わかっていただけます? いやぁ、中学時代のわがアイドルをナマで目撃できたなんて、ホント、うれしかったなぁ。ミーハー心も思わぬ形で大満足、感謝感激でした。