ビートたけし『GONIN』(石井隆監督)

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ユーサク、ユーヤ、と来たら次はTAKESHIでしょう! コレでシメな。
予告編でフィーチャーされた、眼帯つけたビートたけしのどアップ、今でも頭に離れない。そういや、オレなんざも雇用保険が効かない有限会社で苦労させられたぜ(笑)それはともかく。
1994年8月のバイク事故後のたけし、映画復帰第1作。TVでは自分の番組『北野ファンクラブ』に公の復帰予告日前夜に姿を現して、オレはじめファンを喜ばせた。もう忘れた方もいるかもしれないが、当時、たけしは長い間、痛々しい眼帯姿でTVに出続けていた。あの姿、今でも目に焼き付いている。
さて、自らの“宿命の女”名美をめぐる男・村木の永遠なる彷徨を執拗に描き続ける石井隆監督。もっとも近年は名美のバリエーションも多様化(?)、本作ではいきなりフィリピン風俗嬢で「ナミィー」(爆)という役で横山めぐみがわめき散らしてた。ライフワークの看板キャラをギャグにしてどうする。
ちなみに、石井隆作品というと佐々木原保志キャメラマンの映像、濡れた路面に赤い灯が映り……みたいな場面が思い浮かぶ。たけしの監督デビュー作『その男、凶暴につき』(89年)のキャメラも佐々木原氏だが、現場では「伝統」にこだわるなかなかの因業ぶりを発揮したらしい。たけしは初撮影当時の苦労を折に触れてネタにしている。いい悪いではなく、佐々木原氏の持ち味と<キタノブルー>ほど、縁遠いモンはないから、名コンビにならなくて幸いだったかも。佐々木原氏の画もけっこう好きなんだけどな。
……ところで、オレが映画ネタを続けるのは、いまだ尽きぬシャシンへの愛情ゆえではない。おのれがたくわえたネタをどこかで利用せずにはおくまい、とする、タダの「貧乏性」の発露に過ぎない。喩えがテキトーがどうか知らぬが、聴き飽きたCDや本を親しい友人や後輩に買ってもらう気分に近い。要するに、この映画ネタ群、もしかしたら利用価値があるかもしれない……などと愚かにも考えて、四方八方めったやたら、勝手に押し付けているのだ。オレの頭の中だけに埋もれさせては損だ、もったいない! とおめでたくも思い込んでいるワケ。個人ブログだからこそ許される、ネタの押し売りである。
音楽に関してはいかな罵言暴言吐いてても「愛情」と言い切れるが、映画に対しては、もはや……どうかな。愛憎半ばする思い、ってトコだな。そのほうが冷静に見切れるようになって勝負する分にはイイんだけどな。いやさ、映画って、観客とスクリーンの間で交わされる「闘争」だからさ。な、そうだろ、シネフィル諸兄? 少なくともボンクラってな、何でも盆ゴザ勝負に持ち込んでこそ、喰っていけるってモンでぃ。