デイヴィッド・シルヴィアン「Blemish」(対訳:喜多村純)

Like blemishes upon the skin
Truth sets in.

……参った。正直、打ちのめされた。鳥肌が立った。心臓を鷲掴みにされた気分だ。恐ろしささえ覚える。
今までいろいろ音楽を聴いてきたけど、ココまでおのれの心の深層にまで入り込んできた「音」というものを知らない。おそらく、現時点においては、少なくとも、自分が出会ったなかで至高至尊のアルバムではないか。
まさに、「極北」の音楽。「核心」に触れる音楽、、、とでも云おうか。そんな感じ。「デビシル」をナメていたらしい。。。
人生観が変わるとか、そういった驚愕ではなく、一切の妥協が奇跡的なまでに排されたことによる、究極孤高の音世界を耳にして、あまりの衝撃におのれの真の姿に向き合わされたというか、、、うまく言語化できないが、それほど身内が凍るような、おののきを覚えた。
一昨年のちょうど今ごろ、本作がリリースされた当時、即日試聴したし、耳にする機会は何度もあったのだが、ちょうどその頃、自分自身にとって人生最悪な精神状態にあったこともあり、精神的にプレッシャーになると感じて、買うのを先延ばしにしていた。音自体は一聴するや絶対的確信をもって自分にとって「必要な音」とは感じていたのだが、まさかこれほどとは。。。
これほど衝撃を受けたアルバムに出会ったのは久しぶり。強いて云えば、1998年リリースのマーク・ホリスの初ソロアルバムに、音自体の感触と境地は近い気がするが、あの作品には他のミュージシャンとセッションすることで得られた、誰かとの「至福」の瞬間というか、音世界そのものを楽しむムードがあった。デヴィッド・シルヴィアンの本作「ブレミッシュ」にはそれすら、ない。ココに「音を楽しむ」という意味での音楽はない。おのれが信ずる「音」をただひたすら追究したうえに成立した「楽曲」というより、シルヴィアンその人の存在そのものがすべからく「音」と化したかと思えるまでの密度に満ちみちている。
感傷も官能も陶酔も、音楽にまつわる一切の感興を排した、「純粋音楽」とでも評するべき、透徹しきった音群。
本作、歴史的名盤ではなかろうか? 2000年代はおろか、ロック史が生んだ奇跡的なアルバムとして、知るべき人に長く語り継がれて欲しい、そんな作品だ。。。

MARK HOLLIS

MARK HOLLIS