ジム・トンプスン「ポップ1280」(扶桑社、三好基好訳)

「そう、ほんとうはかわいい顔しておとなしくしているべきだったかもしれない。かわいい顔と言っても、男のおれじゃ限度があるけれども」

ジェームズ・テイラーがかつて唄ったように、「火と雨」のなかをくぐり抜けて生き延びねばならぬ我らが人生。誰も助けてくれやしない、てめえのケツはてめえで守らなきゃならない。だから、おれはおれのケツを守るため、おれなりのルールを定めた。それは、おれが見るものすべて、触れるものすべて、おれだけの意志で裁くってことだ。おれが見ているこの世はおれの世界だ。だれのものでもない。もちろん、おれだけのものにもできないことは承知の上だ。でも、おれの手の届く範囲のこと、おれが見聞きするかぎりのことは、おれなりに解決する。そういうことだ。だれにもおれを裁かせやしねぇ。おれのケツは、おれのものだ。突っ込もうとしたり、においを嗅ぎにくる犬が来たら、容赦しない……。*1


*1:ホントは映画化もされた『ファイヤーワークス』の一節を引用したかったのだが、手元にないので、代表作の冒頭文を引用してみた。