デイヴィッド・クローネンバーグ『ヴィデオドローム』

手元にあるユーロスペース発売のパンフレットを見ながら書いてるんだが、邦題ってウ濁だったっけ、コレ? オレはVは「ヴ」イと発音すると気が休まるウ濁愛好家なんだけど、本作についてはずっとハ濁の『ビデオドローム』だったように勘違い、混乱してた。
枕が長々続くんだけど、本作、高校時代にフジテレビの<ミッドナイトアートシアター>で見て以来、偏愛する1本にしていまだ何気に座右の映画。ウチのはてなだって、当初は本作へのオマージュとしてDROMEにしようと思ってたくらい。その時点で、すでにid:doyさんが<MUSIC-VIDEODROME >なる名ブログを開設されてたので、命名をあきらめて大正解だったんだけど、それはともかく。
劇場では今は亡き後楽園シネマで再上映された時に見たけど、本作に限ってはTVのブラウン管、なおかつビデオでチェックするのがベスト。DVDじゃ雰囲気が出そうにないんだよねぇ〜。*1
個人的にはデイヴィッド・クローネンバーグの最高作。イメージが心身をも変容させる、というアイデアをココまでバカバカしくも端的に映像化した作品はないのではないか? 本作だけでメディア論が一冊書けそう、議論の俎上にあげるにもってこいなネタがふんだんに詰まってる。
オレはジェームズ・ウッズ愛好家でもあるんだが、本作の熱演はシンパとなるに決定的だった。すでに『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『サルバドル』は見てたけど、ヤツほど知性と「痴」性が心身両面、完璧に同居してる俳優はいないと思う。マサチューセッツ工科大学なのに政治学科という意味不明な経歴も素晴らしい。そのへんの事情などは、NHKでやってた『アクターズ・スタジオ・インタビュー』で見たりしたけど、その話芸の巧さ、あまりにイメージまんますぎで、何度も腹抱えて笑った。ファンならずとも、再放送したら絶対見るべし。
そしてもちろん、デビー・ハリー。しょせん田舎のガキ高校生、エロのなんたるかなんてわかるワケもなかったが、本作劇中でのあのマゾヒストっぷり、刺激が強すぎた。ブロンディのボーカルとか前知識もあったけど、オレにとっては歌手よりも女優の印象が強い人かもしれん。


本作について語り出すとキリないんだけど、才人ハワード・ショアによる腰椎から背骨をたどって脳髄までジリジリこみあげてくるような、静かなクセに神経に障るスコアもたまらん。Jホラー帝王・高橋洋師匠が学生時代に撮った知られざる伝説の8ミリ映画『夜は千の目を持つ*2の主題曲も、実は本作からの流用だったりしたなぁ。


*1:偉そうに書き付けてるけど、ビデオはカビが生えてしまったんで捨ててしまった。古いビデオほど、保管はキッチリしたいモンです、ハイ。

*2:高橋洋の原点中の原点たる同8ミリ映画を見ずして、氏を語るは片手落ち、とあえて断言。かの黒沢清監督にも畏敬される、高橋洋の才能の底知れなさがわかる一編。引っ越し等諸事情で見逃したが、『ソドムの市』DVD化のあかつきにでも、映像特典として収録超希望!