ボブ・ペック『刑事ロニー・クレイブン』

かつてNHKで放映され、カルト化したBBC制作のTVミニシリーズより。ビデオでは2巻組、307分、5時間を超す社会派サスペンス巨編。
その後、NHKでも再放映されていない模様だし、ポニーキャニオンから“観ないで死ねるか”とタイトルよりもでっかいアオリ文句付き(爆)で出ていたビデオも、店頭では全く見かけなくなった。近所のやる気のないビデオ屋の片隅で見つけたら、処分される前に即借りて見ておくべし。いかにも英国調とでも言うべき一筋縄ではいかない、ハードにして悠然とした語り口で進むゆえ、見通すのはかなり疲れるけど、一見の価値あり。
上記の台詞は主人公クレイブンと、図らずも彼と道行きを共にするCIA工作員ジェドバーグ(ジョー・ドン・ベイカー)の会話から。

「もし、地球と人類の戦いになれば…地球が勝つんだ」
「君はどうなる?」
「地球の側につく」

刑事ドラマで何を大層な会話してやがんだ? などと侮るなかれ。一見ごく平凡な田舎警部、実は元対IRA秘密工作員という数奇な前歴を持つ主人公が、ある日愛娘を殺され、その死の真相を探るうち、米英の核エネルギー戦略をめぐる暗闘に巻き込まれていくという、壮大なスケールの物語なんだからして。
……実は本作、オレも10年ほど前に見たきりだったのが、それ以来機会あるたび探索することウン何年、昨日ようやく後半のみビデオを入手。そんなこんなで、詳細な内容に関しては再見し、いろいろ調査のうえ改めて語らせて頂きたし。
ひとつ耳より(?)な情報を付け加えさせて頂くと、実は本作、あの宮崎駿も見ているらしいんですな。たしか、監督の著作「出発点(1979〜1996)」(徳間書店刊)中で、本人が「深夜だかに、TBSかどこかで見た映画(だと思う)」とかで、本作らしい作品について触れているんですわ。それを読む限りでは、どうやらコレがかのもののけ姫あたりにも、どことなく影響を与えているようにも思えたりしまして、興味は尽きないんであります。
原題は『Edge of Darkness』。監督は本作で認められ、その後ハリウッドにも進出、『007/ゴールデンアイ』『マスク・オブ・ゾロ』を撮った職人派マーティン・キャンベル。脚本はミニミニ大作戦』『戦略大作戦とケイパーもの快作をモノし、本作に入魂しすぎたかその後失速、なぜか『レッドブル』(笑)のホンも書いてたりするヘンな人、トロイ・ケネディ・マーティン。撮影は当時新鋭、『英国万歳!』『がんばれ、リアム』、そしてロバート・アルトマンの最近作『ゴスフォード・パーク』『バレエ・カンパニー』も手掛けるアンドリュー・ダン。しかして音楽は、故マイケル・ケイメンと、なんとなんと、あのエリック・クラプトン! 本作では随所で泣きのスローハンドが炸裂、ファンならコレ聴くためだけでも必見かも。