ブギ浮きイカす邦題100選<その4>+駄目ジャケ100選<その7>:フィオナ・アップル「真実」

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原題:「(長過ぎる! 書き写し拒否!)」
直訳:下記参照
乖離度:★★(某宗教団体の「定説」を思い出させて、×)
難易度:B(昇給でもしたかね?>担当さん)
ぼってり唇に真っ青な瞳できッと見据えるクールな眼差し、正直美人とは云えないが、特徴ありまくりのファニーな顔だち、その印象たるや強烈。ノラ・ジョーンズやジュエルといった同世代若手歌手から一線を画し、最も先鋭的と云うべき歌詞と音世界で度胆抜かせる天才シンガー。プロデューサーは目下アイディアふんだん、多彩な音づくりをさせたら右に出るものなし超才人ジョン・ブライオン。ブライオンあたりが結んだ縁か、『マグノリア』などのこれまた天才監督ポール・トーマス・アンダーソンとはいまや公私共にパートナー、PVは大抵PTAが撮っていて、センス一発/アイディア勝負な見事な映像作品を世に出している。
はてさて、そんな新時代の歌姫のデビューは1996年発表の「TIDAL」。L.A.にシマ張るジョン・ブライオンの「顔」の伝手かどうか、かのヴァン・ダイク・パークスがストリングス・アレンジに参加したりといきなりの豪華版。輸入盤売り出し当時から日本でも一部洋楽ファンの注目を浴びた。
……前置きが長くなったが、そんな若き大物歌姫のセカンドが、今回のお題の「真実」。女性歌手らしい、いかにもなタイトルながら、どっこい驚くなかれ。ホントの題名は洋楽史上最高の長さ!(たぶん、記録は破られていまい) オビについてた全訳を書き写してみよう。

戦場に赴く歩兵は 
王様のように考えるの
戦いの中では
知識こそがとどめをさせるから
そして彼はリングに上がらずとも
既に勝利を手に入れているわ
知性を武器にしたとき
叩きのめす相手など存在しないのだから
だから独りで歩き出すときには
自分を信じて
自分を深めることだけが、頂上へと導いてくれるのだと
覚えていなさい
そして自分が何処に立っているかを分かっていれば
何処に向かえばいいかも分かるはず
もしも途中でつまずいたとしても、大したことじゃない
だってあなたの中にこそ“真実”はあるのだから

−ふぅ。
英語原題を書き写す気力はない。
だって、ディスクでも頭の語句、「WHEN THE PAWN」って表記されているだけだからして(……)。つうか、おどれ、コレ題名やなくて、歌詞やんけ! もしかして「使い回し」か?>フィオたん
で、だな。
ツッコミ入れると、「真実」と訳すのは、ニュアンス的にちと違うような気がするんだな。だって、ジャケットの原題の該当語は「Right」だぜ? より綿密には、「正しさ」とでも訳したほうがいいような。「正しさ」ってのは自らの行動とかに、間違いがないって意味だろ? 正しさイコール「真(まこと)」、よって「真実」というのは少しばかり強引じゃねぇかって思うのな。オレだけかね、こんな細かいツッコミするなんてな? なんだかな、いきなり「真実」とか得体の知れないでっかいフレーズをどか〜んとカマされるとやな、こちとら、気色悪いんよ。
信者をミイラにして甦り術を施してたアホアホ某宗教団体の「定説」を思い出させる。
もうひとつ。ジャケもダメダメだと思う。きりり顔どアップの「TIDAL」みたいな見応えもないし、ちょっち八重歯なヘンな白人ギャルがへらへらナナメ目線、一体どこ見てるねん? てなモンで。レコードならともかく、CDが主流のいま、こういうモヤモヤしたデザインじゃ、売り場でもインパクトないと思うんだけどなぁ。実際、誰が映ってるのかもわかんねぇし、題名もどれがどれかわからねぇじゃん! ジャケに赤を使うんなら、もちっとやり方があるように思うね。
……本人がコンセプトだして、デザインしたらしいんだけどな。ますます、ダメじゃん!

「フィオたん、このアルバムの題名、長いですね。一言で云うと、意味はなんですか?」
「『真実』です」
「はぁ…(ワケわからんな、このネェちゃん!)…ところで、ジャケ、真っ赤っかですね。ちょっとヤバいんじゃないですか? 顔、ニヤけてるし。映画『ミクロの決死圏』に出てくる赤血球みたいですよ?」
「(そんな昔の映画なんて知るかッ!)2作めのジャケットではとにかく、笑顔、笑顔ですッ! コレがレコード業界の『真実』ですッ!」
「なるほど…(それ云うなら「真実」やなくて「常道」とかやろッ!)…ところで、このフィオたんのアルバムのドラム、すごいですね」*1
「ええ。すごいです」
「ほぅ。じゃ、BGMのこのアルバム、お聴きになりますか?」
「ま・さ・か」*2

……明らかに、先に担当者が邦題決めて、訳もそれに従わせた雰囲気ありまくりだな。漢字2語でスパッと言い切るあたり、カッコいいし、うまいと思うけどね。うまいけど、なんだかだまされてるみたいで、いやげな空気を読みとったりしちゃうのよ、オイラ。

発売当時は渋谷駅前にでっかい看板が立ったりと、知名度に比して、洋楽アーティストでは珍しいほどプッシュされた。肝心の売り上げはどうだったのか不安だけど、まぁ、一定数のファンは確保できたんだろう。オレは中古700円くらいで買ったけどな(爆)
本作が出た翌年、前作のプロモ来日時お忍びでついてきてたPTAが『マグノリア』で世界的にブレイク、日本でも一躍名前を売った。アメリカでもいまや屈指の才能あふれるカップルなのは間違いない……って別れてたらどうしよう? いや〜、オレ、最近のショービズ事情、いまいち把握してないんだわ、ゴメンね!
幸運にも未聴な方、興味あればぜひどうぞ。好き嫌いはわかれるけど、タフでシャープな歌声と八面六臂なアレンジが光る音世界は堪能できると思います。マニア系な方には、ジョン・ブライオン入門アルバムとしてもいいかも。
ちなみに、フィオナ・アップルの公式サイトはこちら。
http://www.fiona-apple.com/

真実

真実

*1:「I Know」にはジム・ケルトナー(!)が参加。ジョン・ブライオンはビートを利かせながらも、メロディを際だたせる音作りが実にうまい。

*2:……わきゃるかな? わっかんねーだろーなー。オレがYMOだった頃、姉貴はツイストだった……