『新・座頭市 I』第11話「風に別れた二つ道」

原作:子母沢寛
脚本:東條正年
監督:工藤栄一
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
不死身の仁吉:湯原昌幸
桐生の吉蔵:西村晃
赤堀村の六蔵:辻萬長
おせい:宗方奈美
政吉:岡部健
久六:谷崎弘一
おはな:新地和子
与平:海老江
寅松:見鷹健児
為吉:尾沢誠
ほか


上州桐生に、昔世話になった老親分吉蔵(西村晃)を訪ねる座頭市勝新太郎)は、道中、不死身の仁吉(湯原昌幸)という若いやくざと道連れになった。知らぬが仏の強みで、市を小バカにして口ではいっぱしのことを言っているが、仁吉は、農業を嫌い、仁侠道にあこがれて村を飛び出してきた農民の息子だった。市には何もかもお見通しだったが、どこか愛嬌のある仁吉の誇大妄想を憎めなかった。罪のない仁吉のみえみえのはったりを真に受け、途中から、やはりやくざを夢見て同じように村を飛び出してきた久六(谷崎弘一)が、道中に加わる。二人は、義兄弟の誓いを交わす。「兄貴、兄貴」と久六にたてまつられ、仁吉はいい気持ち。変な道中は続く。
 自分のことを互いにいっぱしの渡世人と錯覚する、すっとんきょうな仁吉・久六の迷コンビは、赤堀村の六蔵(辻萬長)一家に草鞋を脱ぐ。一方、吉蔵は、寄る年波に勝てず子分が一人去り、二人去り、昔の威勢もどこへやら、孫娘のおはな(新地和子)と淋しく暮らしていた。ところで桐生は有名な絹の名産地。卑劣な六蔵は、吉蔵が長年取り仕切ってきた絹市の差配の権利を、虎視眈々と狙っていた。だが、吉蔵には座頭市がついている。一宿一飯の恩義で、市を斬らざるを得ぬ羽目になり、仁吉は青くなる。
 すでに仁吉は、市がただのあんまでないことはよく知っていた。到底太刀打ちできる相手ではない…。