ロバート・アルドリッチ『合衆国最後の日』

核兵器を配備したミサイル基地を占拠、合衆国大統領を人質として要求し、ベトナム戦争の「真実」を世間に公表するよう迫る元将軍(バート・ランカスター)。国家存亡の危機への対処に、右往左往する合衆国首脳陣。閣僚は国家の威信を守るため、大統領(チャールズ・ダーニング)に将軍の下へ赴くことをうながすが、「命の保証がまったくない!」と大統領は抵抗する。
親友でもある側近は事態を打開するためにやむを得ず、心を鬼にして、大統領を説得する。そのくだり、吹替版で再現。
【※ネタバレという類のモノじゃないけど、内容を知りたくない人は飛ばしてね】

「どうすればいい? あいつら俺を殺す気だ」
執務室のソファに沈みこむ大統領。
「あの情けない閣僚どもときたら、俺の顔をまともに見られなかった」
側近、天を仰いで同意の嘆息。
「(はっきり大統領に人質になるようさとした国務長官)ガスリー以外はね。あのじいさんはたいしたもんだ」
「まったくとんだ災難だ」
頭を抱える大統領に、側近、気色ばんで、
「何を言ってるんだ! これは君自身の問題だ。誰を行かせる? 俺か? ガスリーか? アイゼンハウアーか? 墓から掘り出して行ってもらうか? 代理でことが済む問題じゃァない。あいにく君は大統領なんだ。行かなきゃならない
「君にはわからないよ。正直言って、こわいんだ」
弱音を吐く大統領に、側近、手にしていたグラスを置いて、真っ向から彼の目を見据える。
まちがってるとか、正しいとか、そんなことは忘れてしまえ! これは君の仕事だ!
そりゃあ、ひどい話さ。ひどいよ! ふうゥゥ〜ッ、残酷だ! でも、しょうがない!
黙って聞いていた大統領、ややあって、笑い出す。
「…ひどいやつだ。ひどいよ! ははは、お前なんてクビにしとくべきだった」
「同感」側近、グラスをあげてこたえる。
肚をきめた大統領、静かな面持ちでうなずいた。
「そうだな。どうせ、いつかは死ぬんだ」
「そうです。大統領閣下」

……録画したビデオが出てこないので、画面を見て書き起こしたわけじゃなし、細部は不正確ですが、大体こんな感じですかな。大統領の声は石田太郎だったハズ。
語り伝えたい名場面は、数限りなくある。