『新・座頭市 II』第1話「恋鴉いのち百両」

原作:子母沢寛
脚本:新藤兼人
監督:黒田義之
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
お咲:小川知子
夕鴉の又八:長谷川明男
鬼熊の勘造:鈴木康弘
くちなわの権太:高木均
いたちの辰:暁新太郎
清太:美鷹健児
宿の女中:千うらら
大庭弥九郎:西田良
勘造の女房:太田優子
岩次:布目真爾
小女:新名一美
ほか


武州・熊谷宿で、渡世道の風上におけないケチなやくざ四ツ目の利三郎をたたっ斬り、あてのない旅を続ける座頭市勝新太郎)は、道中、越中富山の女薬売りお咲(小川知子)と道連れになった。地味で、地道で、控え目で、それでかゆいところまでよく気がつく、素人女の良さをしみじみと感じさせるようなお咲と旅をしていると、重なる旅で荒れた市の心も自然となごんだ。市は、雪深い富山でお咲の帰りを待っているという彼女の亭主に、軽いねたみさえおぼえた。
 実は、何くわぬ顔をして、お咲は利三郎の女房。非は全て利三郎にあるということは、お咲きにも分かり過ぎるぐらい分かっていた。だが、このまま引っ込んでいては渡世人の女房の意地が立たぬ。お咲は、田地田畑を売り払ってつくったなけなしの百両を薬の行李にひそめると、利三郎の弟夕鴉の又八(長谷川明男)をたきつけ、敵討ちの旅に出たのだった。お咲に義姉以上のものを感じていた又八には、お咲のことばは絶対だった。
 金に糸目をつけずに又八が雇った刺客も、市の仕込杖の前には歯が立たず、敵討ちは次々失敗に終わった。鉄火女の本性を現し、お咲は女の操を武器に、市の命を狙うが、これも失敗した。一方、お咲の百両に目をつけるやくざの親分くちなわの権太(高木均)は、敵討ちの助っ人をエサに、おためごかしに又八を手なずけ、まんまと術中にはまったお咲と又八に、くちなわ一家の魔手が迫った。助けたくはないが、利三郎へのせめてもの供養にと、恩讐を離れて二人の危機を救う市の心中は複雑だった。