第2話「父恋い子守唄」


原作:子母沢寛
脚本:佐藤繁子
監督:太田昭和
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
首の弥三郎:辰巳柳太郎
市左衛門:羽田勉
蔦蔓のおりん:宇津宮雅代
仙波左内:新田昌玄
佐渡帰りの弁蔵:岸田森
番頭 仁助:勝部演之
代貸 文助:細川智
乾分 政吉:菊地健一
おさわ婆さん:岡嶋艶子
お咲:藤井多重子
馬喰:宮島誠
ほか

街道に、小さな男の子を連れた座頭市勝新太郎)の姿が見られた。行き倒れになった旅の女お咲(藤井多重子)の子供を引き取ったのである。子供の名は市左衛門(羽田勉)といった。同じ“市”同士、二人の間には子供と大人の仕切りを越えた不思議な心の通い合いが生まれた。わんぱくな市左衛門の遊びの相手をしていると童心にかえったような心地がして、重なる旅ですさんだ市の心も自然となごんだ。二人は道中、一人の老農夫と道連れになった。老人を異風の浪人仙波左内(新田昌玄)が襲った。市の助けで老人は軽傷ですんだ。いかにも好々爺然としていたが、老人は以前は“草木も枯れる、血も凍る”と恐れられた一匹狼の渡世人首の弥三郎(辰巳柳太郎)だった。
 市、市左衛門、弥三郎の三人は、弥三郎が常宿にしているという紳一家に草鞋を脱いだ。一家は若い娘の身空で気丈な女親分蔦蔓のおりん(宇津宮雅代)が切り回していた。弥三郎が浪人者に襲われたと聞き、おりんの顔色が変わる。実は左内はおりんの兄だった。話は十三年前にさかのぼる。殺し屋だった兄妹の父は、金で雇われて弥三郎を斬る仕事を引き受けたが、あべこべに弥三郎が殺される。斬ったはったは渡世のならい、いまはのきわに父は孤児となる兄妹の後事を弥三郎に託した。兄妹は約束どおり弥三郎に育てられた。おりんにはその恩を徳とこそすれ弥三郎に対して恨みのひとかけらもなかったが、左内はいつしか家を飛び出し、父の敵を討つ機会を狙うようになっていたのだ。
 一方、市左衛門は、追分宿の資産家油屋市兵衛の庶出の子供だった。最近、当主の市兵衛が死に、遺言には、家督は市左衛門に譲るとしたためられていた。身上を狙い、市兵衛の在生中から女房とできていた番頭の仁助(勝部演之)は、心中はなはだおだやかでない。仁助は、市左衛門を亡き者にせんと、殺し屋佐渡帰りの弁蔵(岸田森)を放つ。もちろん弁蔵の仕事はことごとに市に邪魔される。弁蔵は左内と結託、市左衛門を人質にとった。そして所定の場所に弥三郎が単身で出向かなければ、市左衛門の命は無いと脅迫。市は、稼業からすっぱり足を洗い、老農夫として静かな余生を送る弥三郎を、斬ったはったの修羅場に再登場させたくはなかった。市の腹は決まった。弥三郎に当て身をくわせると…。