『新・座頭市 I』第21話「契り髪」

原作:子母沢寛
脚本:中村努
監督:勝新太郎
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
およう:由美かおる
独眼竜の清次郎:峰岸徹
紅屋儀兵衛:桑山正一
磯吉:南祐輔
初蔵:岡部正純
ほか


座頭市勝新太郎)は、投身自殺をはかったおよう(由美かおる)という女を助けた。若い女が死のうとするからには、生きているのが嫌になるようなそれなりの理由があるのであろうが、死んで花実が咲くものかと、不心得をさとす市に、おようは、よけいなお世話だとはすっ葉に毒づく。わざとすれっからしをよそおうおようの声の響きには、生娘のような幼さが残っていた。市は、おようを追ってきた粂政一家の三下磯吉(南祐輔)、女衒の初蔵(岡部正純)らをこてんぱんにやっつけた。
 おようは粂政一家の代貸し独眼竜の清次郎(峰岸徹)の女だった。世間知らずの女を食いものにする清次郎の触手はクモの糸のように執拗で、もがけばもがくほど自由を奪った。骨のずいまでしゃぶられるがんじがらめから逃れるには、おようには死より他に道はなかった。男から男へたらい回しにされ、男の醜さを嫌というほど見せつけられてきた哀れなおようが、市のただの親切を下心があってのこととしか受け取れないのは当然であった。市は、さあどうでもしておくれと、しどけなくしなだれがかってくるおようを突き倒す。姐さん見そこなっちゃいけねえ。もっと自分のからだは大切にするものだ。
 世の中にはこんな男もいたのか。おようには新鮮な驚きだった。追っても追っておようは市についてきた。二人のかたちばかりのおしどり道中が始まった。市は自分を神様かなんどのように尊敬するおようのためにも、当分は仕込杖にものを言わせる斬ったはったの暮らしから決別することを心に誓った。二人は、紺屋の紅屋儀兵衛(桑山正一)のところに住み込む。儀兵衛の情けで離れを貸してもらい、おようと差し向いでするままごとのまねごとのような三度の食事は、重なる旅にすさんだ市の心をなごませ、久しぶりに味わう安寧の日々だった。
 しかし幸せは長くは続かなかった。可愛さあまって憎さ百倍。年甲斐もなく美人のおように言い寄ってこっぴどく振られた腹いせに、儀兵衛が市を粂政一家に売った…。