『新・座頭市 II』第10話「冬の海」


原作:子母沢寛
脚本:勝新太郎、中村努
監督:勝新太郎
音楽:青井八郎
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
てん:原田美枝子
甚太:谷崎弘一
四ツ谷の清兵衛:内田朝雄
関の光蔵:守田学哉
ほか

四ツ谷の清兵衛(内田朝雄)に、子分にする条件に座頭市勝新太郎)を斬れとそそのかされ、やくざ志願の少年甚太(谷崎弘一)が市を襲った。もちろんかなう相手ではない。市はよんどころなく傷つけた甚太を、宿場の養生所に入れてやった。折から養生所では、ちょっとした事件が起きていた。白血病で入院中のてん(原田美枝子)という少女の患者がいなくなったのだ。四ツ谷一家の執拗な追跡に悩まされる市は、道中ひょんなことからそのてんと道連れになった。
 周囲で秘密にしていたが、てんは自分があとひと月の命だということをよく知っていた。山国育ちのてんは、死ぬ前に一度でいいから海が見たかった。てんは養生所を脱走した。人を疑わず、運命を呪わず、限りある命をひたむきに生きる、星の生まれ変わりのようにけがれを知らぬてんの清らかさは、斬ったはったで汚れた市の心に、夜明けの海から吹いてくる一陣の風のようにさわやかだった。海辺の産屋で、市とてんの奇妙な共同生活が始まった。途中から甚太が加わった。地道に生きることの尊さを教えてくれた市に、一言礼を言いたかったのだ。
 絵を描くことが好きで、天才的な画才に恵まれたてんは、市をモデルに、短い生命の炎を燃焼しつくすかのように、制作に励んだ。だが、市が永遠に続けばよいとさえ願ったのどかで充実した海辺の生活は、長くは続かなかった。小屋を、四ツ谷一家が放った殺し屋関の光蔵(守田学哉)らが取り囲んだ。まず、甚太が血祭りにあげられた…。