『新・座頭市 I』第15話「仕込杖が怒りに燃えた」

原作:子母沢寛
脚本:新藤兼人
監督:勝新太郎
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
おしの:真野響子
清吉:清水康晴
寒天の清松:剣持伴紀
赤鯰の長八:草薙幸二郎
辰六:今井健二
留一:小池雄介
三太:沖田駿一
庄屋藤左衛門:田武謙三
ほか

無駄な殺生はしたくないが、売られた喧嘩は買わねばならぬ。座頭市勝新太郎)は、いきなり斬りつけてきた男をたたっ斬った。男は、やくざ赤鯰の長八(草薙幸二郎)の子分の寒天の清松(剣持伴紀)だった。女房おしの(真野響子)と息子清吉(清水康晴)の顔を一目見てから死にたい…と断末魔の声をふりしぼる清松。これも何かの縁だ、市は瀕死の清松を背負った。だが清松は家に着く前に絶命する。
 市からわけを聞き、おしのには、長八が殺したかったのは市ではなく、清松だということがすぐにピンときた。実は、好色な長八は、かねてより美人のおしのに横恋慕、その亭主の清松が目障りだったのである。案の定、長八の命令で子分の辰六(今井健二)たちがおしの略奪に押しかけ、大乱闘になった。騒ぎで行灯が倒れ火事になる。市は一人で辰六たちを蹴散らすが、大火傷をする。
 気がつくと市は山あいの炭焼き小屋でおしのに介抱されていた。すでに四日になるという。その気になればいとも簡単に亭主の敵を討てたはずだ。斬ったはったは渡世のならい。悪いのはかえって清松のほうだ。おしのには市に対して何の恨みもなかった。清吉も市によくなついた。おしのの献身的な看病で市の火傷はめきめき回復した。市に美味しいものを食べさせようと、昼間は農家に雇われて慣れない重労働に精を出す、おしののいじらしさに報いるために、市は、全快したら母子を故郷に無事送り届けてやるつもりだった。静かな海辺の村だという。血の匂いの染みついた汚れた体ではしょせん見果てぬ夢だが、おしのが真剣に勧めてくれるように、嫌な渡世からすっぱりと足を洗い、そんな所で平和に暮らせたらどんなに幸福だろうと、市はふと思った。
 看病疲れが出て、市の全快と引き換えにおしのはどっと寝込んでしまう。生活費を稼ぐために、市は清吉を連れてもみ療治に歩く。その留守に、隠れ家の炭焼き小屋が長八に発見されてしまった。そして…。