『新・座頭市 I』第1話「情けの忘れ雛」

原作:子母沢寛
脚本:東條正年、沖守彦
監督:勝新太郎
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
おしの:いしだあゆみ
榊十蔵:江見俊太郎
長次:上野山功一
辰造:藤岡重慶
半助:松山照夫
太吉:井上博一
彌吉:石山政五郎
おかよ:飯島洋美
おゆき:小柳圭子
茶店の親爺:谷崎弘一
ほか

座頭市勝新太郎)の目の前で、関八州取締出役榊十蔵(江見俊太郎)に一人の旅人が斬られた。旅人は、市に一対の雛人形を託すと、「友部宿の“の沢屋”、おしの、おかよ…」と言い残して絶命した。
 友部宿。“の沢屋”は茶店とはたごを兼ねていて、女主人のおしの(いしだあゆみ)が幼い娘のおかよ(飯島洋美)を抱えて、女手一つでかいがいしくささやかな店を切り回していた。実は、市が雛人形を預かった旅人はおしのの亭主の彌吉(石山政五郎)だった。土地の親分友部の辰造(藤岡重慶)の代貸の彌吉は、一人娘おかよの将来を考え、堅気になる決心をしたが、辰造は、盃を返す条件として彌吉にライバルの野中の権造を斬らせた。権造を斬った彌吉は長い草鞋をはいた。彌吉が堅気になって帰ってくるのを指折り数えて待ちわびるおしの・おかよ母子があまりにも哀れで、市は彌吉が非業の最期を遂げた真実を言い出しかねた。
 権造が死んで思いどおりに縄張りを広げた辰造は、悪代官榊と結託、弱きをくじき強きにこびる無道ぶりで、きわめて評判が悪い。実は彌吉も、かねてよりおしのに横恋慕の辰造が、榊にたんまり賄賂を使い、法的措置として始末させたものである。権造殺害の罪状によりというのだから恐れ入る。榊に献金するためにも金がいる。辰造一家の悪らつないかさまに引っかかり、泣きを見る者は数知れなかった。
 なかなか言うことを聞かないおしのに業を煮やし、辰造はついにおしのを略奪。「あんな渡世の筋目の通らねえやつをのさばらせておいては、世のためにならねぇ!」。市の怒りは心頭に発した。