『新・座頭市 I』第12話「金が身を食う地獄坂」

原作:子母沢寛
脚本:佐藤繁子、八亀文平
監督:田中徳三
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
権之助:緒形拳
おのぶ:町田祥子
由松:須田圭一
重蔵:高木均
武次:中井啓輔
岩五郎:原田力
浪人:浜田雄史
ほか


座頭市勝新太郎)は、道中、ある宿場で、やはり目が不自由で昔あんまの手引きをしていた権之助(緒形拳)に再会した。権之助は、いっぱしの高利貸しになっていて宿場中でよい羽振りだった。市の知っている権之助は、小心で意気地のない負け犬だった。よくかばってやったものだ。その男が変われば変わるものだと、市は自分の目を疑う。取り立てにはやくざ重蔵(高木均)一家をつかって情け容赦なく、陰ではダニのように嫌われているのを知ってか知らずか、金の力を過信する権之助はいっこうに意に介する様子はない。重蔵も心の中ではいまいましく思いながらも、金の負い目があるので一目置かざるを得ない。いくら金が敵の世の中とはいえ、金に凝り固まっている権之助のすさまじい金銭哲学に、市は砂をかむ思いだった。
 権之助を鬼気迫るばかりの金の亡者に変えた理由を知り、市は複雑な気持ちになる。権之助には、京へ上って盲官の最高位の“検校”の位を買うという夢があった。さんざんさげすんだ世間を盲人が見返すには、それより他に道はないのだ。悲願の達成には千両の大金がいる。市は、金がないと身体障害者が幸福になれない世の中の不条理に腹が立った。そして、夢がある権之助がちょっぴりうらやましかった。だが、悲しい夢だ。
 鬼のような権之助も、幼い息子の由松(須田圭一)にだけは目がなかった。市は、由松のために権之助の虐待に泣きの涙で耐えている女房おのぶ(町田祥子)に同情。その由松とおのぶがさらわれた。半狂乱の権之助。だが、鬼の目にも涙は真っ赤な空泣きだった。市の首に大枚五百両の賞金がかかっていると重蔵に聞かされ、金のためなら昔の恩人を売ることなど朝飯前の権之助が、市をおびき寄せるために重蔵一家をつかって仕組んだ狂言だったのである。そして…。