『新・座頭市 II』第9話「まわり燈籠」

おやっさん!!!


原作:子母沢寛
脚本:小倉洋二
監督:森一生
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
ぎんなんの三次:石橋正次
ゆき:遠藤真理子
箕生の儀助:内藤武敏
小さぶ:平泉征
狩場の乙蔵:小林昭二
石和の猫又:椎谷健治
よしきり源太:黛康太郎
えくぼの弥太郎:笹木俊志
飯屋の親爺:日高久
乙蔵の女:竹中ひろ子
ほか


圧政に苦しむ農民の窮乏を黙視するにしのびず、代官所襲撃の先頭に立った博従箕生の儀助(内藤武敏)の首に、百両の賞金がかかった。国を捨て、縄張りを捨て、大勢いた子分たちとも別れ別れになり、懐刀の小さぶ(平泉征)をたった一人の供に、不自由な放浪の凶状旅を続ける儀助は、昔面倒を見てやった狩場の乙蔵(小林昭二)一家に草鞋を脱いだ。どこで嗅ぎつけたのか、宿場には、儀助の賞金首を狙って死臭に群がるハイエナのように、血に飢えた命知らずの無法者たちが集まってきた。その中には、ぎんなんの三次(石橋正次)、石和の猫又(椎谷健治)、よしきり源太(黛康太郎)、えくぼの弥太郎(笹木俊志)の顔も見られた。
 ゆき(遠藤真理子)の旅宿で、座頭市勝新太郎)は、若い一匹狼の三次と相部屋になった。威勢のいいのは空元気かと思ったら、童顔に似ず三次の長脇差の腕は、無手勝流ながらぞっとするような凄味があった。つまらぬ立て引きから弥太郎が三次に殺され、それを市の仕事と難じて、猫又が市に詰め寄った。旅の空で男同士の固い友情で結ばれた浪人向坂監物との誓約から、二度と仕込杖を抜かぬ主義を守り、猫又の凌辱をじっと甘受する市を見るに見かね、しょぼくれた旅のあんまに対する若者らしい義侠心から血気にはやる三次は、猫又を一刀のもとに斬って捨てた。急に宿場中が騒がしくなり、表面は歓待の情を示すものの、とんだ疫病神に舞い込まれたと、乙蔵は儀助主従の逗留が荷厄介になってきた。ただでさえ憂いものつらいものの旅が、木の葉のそよぎにも心の休まるひまのない凶状旅であってみれば、難儀はなおさらのことだ。若い小さぶには、絶望的な逃亡生活に対する忍耐が極限に達していた。乙蔵と小さぶの間に密約が成立した。儀助をだまし討ちにかけ、賞金稼ぎの仕業にするのだ。そうすれば各親分衆への言い訳も立つ。そして…。