『新・座頭市 I』第8話「雨の女郎花」

原作:子母沢寛
脚本:猪又憲吾
監督:森一生
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
お紋:浅茅陽子
仲沢金五:峰竜太
仲沢友江:香野百合子
権次:長谷川明男
津久井玄内:横森久
藤三郎:沼田曜一
おすえ:未永厚子
ほか

 信州・土田藩の江戸屋敷で、江戸家老一派にお家横領の不穏な空気があり、陰謀を未然に防ぐために、一味の連判状を国表の藩主に届ける密令が、家中の仲沢金五(峰竜太)にくだった。新妻の友江(香野百合子)をともない中山道を急ぐ金五は、ある宿場で、豪雨にたたられ足止めを食ってしまう。一刻の猶予もならない任務の遂行に支障をきたす以外にも、その宿場に長居はしたくない理由が金五にはあった。
 話は二年前にさかのぼる。金五はまだ独身だった。江戸勤番に決まり出府の途中、やはり同じように長雨にたたられた。つれづれを飯盛女お紋(浅茅陽子)になぐさめられた。夜ごとに枕の数の変わる泥水稼業はしていても、お紋はめずらしく心根のやさしい女だった。金五は、きっと正式に妻に迎えにくるからと約束して、お紋と別れた。そのときは本気だった。だが、結果的には約束は果たされなかった。官仕えのつらさ、上役から友江との結婚をすすめられ、断りきれなかったのだ。
 金五の言葉を信じ、お紋は待って待って待ち続けた。だが、いつまでたっても恋しい金五は姿を現さなかった。汚れたからだで人並みの幸福を願った自分が馬鹿だった…。涙も枯れ果て、男にも世間にも強い不信感を抱くお紋は、しかし自分のわびしさを知っていても、なお明るく振る舞う女だった。浮世のあぶれ者同士のすがりつきたい真心が通じ、座頭市勝新太郎)とお紋は意気投合。市に対するお紋のこれみよがしの深情けは、振られても振られてもしつこくつけ回す、やくざ藤三郎(沼田曜一)一家の子分権次(長谷川明男)へのつら当ての意味もあった。
 お紋の歓心を買うための権次のしたり顔の注進で、お紋は、金五がしかも夫婦連れで宿に滞在しているのを知る。可愛さあまって憎さ百倍、力になってくれれば言うことを聞くからと、お紋は、金五が大事そうにしているという連判状を、中身が何たるかも知らず権次に盗ませようとする。折から、連判状を奪取すべく、江戸家老一味の津久井玄内(横森久)も宿に到着した。津久井が藤三郎に協力を依頼したことから、話はいよいよ錯綜、そして…。