『新・座頭市 I』第9話「見えない涙に虹を見た」

原作:子母沢寛
脚本:犬塚稔、中村努
監督:田中徳三
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
おその:音無美紀子
為吉:伊丹十三
錦屋の甲蔵:北村英三
馬田の信次:原口剛
久兵衛;高並功
惣吉:沖田駿一
安之助:小池雄介
半太:松尾勝人
ほか



座頭市勝新太郎)は、道中、幼なじみの為吉(伊丹十三)・おその(音無美紀子)夫婦にめぐり会った。市に幼き日の記憶がよみがえる。チビで目の不自由な市はいつもみそっかすで、ガキ大将の為吉によくいじめられたものだ。そんな市をかばってくれるのは決まっておそのだった。宿場一番の資産家と言われる老舗のそば屋「天狗庵」の息子で、怖いもの知らずの為吉もおそのにだけは弱かった。おそのちゃんがおいらのお嫁さんになってくれればいいな、と思いながら、そんなことは絶対にありえないと、子供心に早くも市は現実の悲哀を味わったものだ。だが、おそのがいたから市の少年時代の記憶はいつも楽しい。市にとっておそのは女王様だった。
 為吉は、やくざ馬田の信次(原口剛)一家に追われていた。ばくちに手を出して「天狗庵」の身代も人手に渡り、身重の体のおそのを連れて夜逃げ同様にして故郷を捨てた、うらぶれたおしどり道中で、またもやばくちに手を出し、馬田一家に多額の借金をつくってしまったのだ。市に蹴散らされ、尻尾を巻いて逃げ出した馬田一家は、錦屋の甲蔵(北村英三)一家に加勢を頼む。
 座頭市と聞き、甲蔵の目が光る。一家にとって市は不倶戴天の敵だった。あべこべに、馬田一家は錦屋一家に市討ち取りの加勢を頼まれた。馬田一家は、これまでの借金は棒引きにした上に過分の色をつけるからと為吉を籠絡。卑劣な為吉は、おそのが拉致されたと嘘をつき、市をおびき寄せた。やがて、市は為吉の心底を見破った。いくら幼なじみでも、そんな人間のくずのような奴のために命を張る筋目はどこにもない。だが、かりそめにも為吉はおそのの亭主だ。おそのの胎内には為吉の子供が宿っている…。敢然と危地に乗り込む市の胸中は複雑だった…。