『座頭市物語』第13話「潮風に舞った千両くじ」

原作:子母沢寛
脚本:直居欽哉、原田順夫
監督:井上昭
音楽:富田勲
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
勝浦の新助:原田芳雄
おはま:赤座美代子
お初:武原英子
五郎蔵:小池朝雄
岩松:阿藤海
辰三:沖田駿一
代官 佐上:浜田寅彦
ほか


最近、将軍家に慶事があり、安房・上総一帯の大親分、小湊の茂十殺しの罪で島送りになっていた、五郎蔵(小池朝雄)一家の勝浦の新助(原田芳雄)も、刑期半ばで御赦免となった。生まれ故郷を目指してまっしぐらの新助は、道中、久しぶりの酒に酔っぱらい、座頭市勝新太郎)に介抱される。律儀な新助は、せめてもの礼心に、何の気なしに貰った成田山新勝寺富くじの札を市に与えて去った。ところが、何とこれが一等千両の当たり札。酒飲みの世話に千両はいくら何でもべらぼう過ぎる。やはり律儀な市は、新助のあとを追った。
 三年ぶりに娑婆の土を踏んだ可愛いはずの子分、新助の姿を見て、五郎蔵は懐かしがるどころか、少なからずうろたえる。恩赦による刑期の短縮は、とんだ計算違いだった。実は茂十殺しは、茂十の縄張りを虎視眈々と狙う五郎蔵の仕組んだ罠だったのだ。
 悪らつな五郎蔵は、単純な熱血漢の新助をけしかけて茂十を殺させ、思惑通りに縄張りを手に入れたばかりか、かねてから横恋慕の新助の女房おはま(赤座美代子)をもまんまと自分のものにしていた。おまけに、おはまの手引きで、新助の妹お初(武原英子)を好色な悪代官佐上(浜田寅彦)に取り持つ筋書きも出来上がっていた。親分の情婦のぜいたく三昧になれきったおはまは、すっかり心のすさんだ女になっていた。
 五郎蔵は、新助を追ってきて一家に草鞋を脱いだ市に、邪魔な新助を殺す相談を持ちかける。「目は見えなくても、いい奴と悪い奴の区別はつきます」。せっかく届けてやった富くじを「一度人にやったものは絶対に受け取らない」と、あくまでも突っ返す意地っ張りの新助に男の友情を感じる市は、彼に味方して、並みいる五郎蔵一家を敵にまわす。