『新・座頭市 I』第29話「終りなき旅路」(最終回)

原作:子母沢寛
脚本:新藤兼人、中村努
監督:森一生
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
佐倉市之進:竹脇無我
竹庵:藤岡琢也
荒磯の甚吉:小池朝雄
ひさよ:原田英子
札売りの女:小林加奈
少女:吉田美由紀
ほか


座頭市勝新太郎)は、一夜の宿りに、人世の落伍者の吹きだまりのような、とある一軒の木賃宿に入った。それぞれに暗い過去を引きずって、希望のないその日暮らしにあえぐ者ばかりの宿泊者の中には、医者くずれの竹庵(藤岡琢也)、妻ひさよ(原田英子)に売春をさせてやっと露命をつなぐ、病弱な浪人佐倉市之進(竹脇無我)もいた。だが、どん底どん底なりに、住めば天国だった。底辺にこそ人情はあった。不思議な連帯感が重なる、旅に疲れた市の心をなごませる。
 市之進は、父の敵堀田甚左衛門の行方を捜していた。めざす敵にはめぐり会えないまま、旅に病んで、早七年の歳月が無為に通り過ぎようとしていた。無事本懐を遂げるまでは家郷への帰参はかなわないのだ。“終りなき旅路”を強要する残酷な武士道の掟を、何度恨みに思ったことか…。
 市と竹庵は、旅のつれづれにやくざ荒磯の甚吉(小池朝雄)一家の賭場に上がるが、折りも折、甚吉が急病になり、一家中が大騒ぎとなった。医者のいる宿場まではかなりの道のりで、火急の間に合わない。竹庵の昔取った杵柄と市のもみ治療がこんなとき思わぬ役に立った。おかげで甚吉の危ない命が助かった。たんまり謝礼がはずんだ。市と竹庵の大盤振る舞いで、木賃宿は飲めや歌えの大騒ぎとなった。
 一方、甚吉の風貌を聞き、これまで生気のなかった市之進の目が急に輝き出す。まぎれもなく堀田甚左衛門だ。案の定、甚吉は堀田の世をしのぶ仮の姿だった。そして…。