『座頭市物語』第9話「二人座頭市」

原作:子母沢寛
脚本:高橋二三
監督:勝新太郎
音楽:富田勲
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
市松:植木等
おけい:浜木綿子
天神下の升五郎:遠藤大津朗
代貸武平:国一太郎
女中:高木峯子
自首女:朝永桐子
ほか


長年いがみ合う川端一家と天神下の升五郎(遠藤大津朗)一家。これまでやや劣勢の天神下一家の形勢が最近一挙に逆転した。理由を聞き、座頭市勝新太郎)はびっくり!何と、天神下一家に“座頭市”が草鞋を脱いでいるというのだ。しかし、現にこうして本人はあずかり知らぬ。偽者が現れたとしか言いようがない。
 市は、天神下一家には大事な客人だという、その“偽座頭市”のもみ治療を頼まれた。偽者の正体は、あんまの修業時代の兄弟弟子の市松(植木等)だった。泣き虫だがひょうきんな市松と、腕っぷしは強いが不器用な市とは何となくウマが合い、二人はいつも一緒だった。悪童どもにいじめられる市松を市はよくかばってやったものだ。憎き偽者が懐かしい竹馬の友だと判明した以上、今さらきつい糾弾もならない。市は拍子抜けの苦笑。
 市松の“座頭市”を襲った川端一家を、一瞬にして市はたたっ斬る。それも当然“座頭市(市松)”のしわざということになり、盛名は上がるばかりだ。
 市松には、おけい(浜木綿子)という、渋皮のむけたいい女の黒幕がついている。人のいい市松が盲目なのを幸い、泣く子も黙る座頭市に仕立て、持ち前の口八丁とあだっぽさを武器に、一儲けを企んでいるのだ。いわば市松は、おけいのあわれな“かいらい”に過ぎない。それを、「客人」とたてまつられていい気になってふんぞり返っている市松が、市には危険に見えて仕方がない。少年時代の市松は勘が悪く、しょっちゅう頭にコブを作るので“コブ市”というあだ名がついていた。斬ったはったに強かろうはずがない。しかし、おけいの色香にぞっこんの市松は、「地道にあんま稼業に戻らないと、今にとんでもないことになりますよ」という市の友情ある説得にも、一切耳をかそうとしない。市松もおけいも、市が本物の座頭市だとは夢にも思っていないようだ。
 悪女のしたたかさで、市のほうがドジな市松よりも少しはましだと読んだおけいは、牛を馬に乗り換えようと、色仕掛けで市を口説きにかかる。もちろん、市は軽くいなす。そんな時、川端一家から天神下一家に一通の書状が届いた。文面には、「“座頭市”の首を渡せばよし、いなやの場合は総攻撃をかける」とある。おけいは、「いただくものに色さえつけてくれれば“座頭市(市松)”をおびき出してもよい」と、あわてふためく升五郎に色っぽくしなだれかかった。虫も殺さぬ顔をして、“内心如夜叉”を絵に描いたような女だ。そして…。