『座頭市物語』第3話「祥月命日いのちの鐘」

テレビ版座頭市では最初となるカツシン演出作。

原作:子母沢寛
脚本:高橋二三
監督:勝新太郎
音楽:富田勲
制作:勝プロ/フジテレビ

座頭市勝新太郎
青竹の紋次:北大路欣也
千代:今出川西紀
新吉:青山良彦
おまさ:外崎恵美子
中森の源八:江幡高志
代貸し:遠藤征慈
殺しにくる集団:チャンバラ・トリオ
中年浪人:藤沢薫
中森の子分:阿波地大輔
ほか

気丈な後家おまさ(外崎恵美子)と、気弱な息子新吉(青山良彦)で、細々と守っている秋草一家の縄張りを狙う悪貸元、中森の源八(江幡高志)は、卑劣にも五人の殺し屋を差し向ける。五人の中には、一匹狼の旅鳥、青竹の紋次(北大路欣也)に、中年の浪人者もいた。たまたま、秋草一家には座頭市勝新太郎)が草鞋を脱いでいた。市の仕込み杖の前に五人のうち四人までがもろくも倒れ、残る紋次も息の根を止められようとした時、“明け六つ”の鐘が鳴りだした。するとどういうわけか、市は刃をさやにおさめる。紋次はからくも命拾いをした。一方、騒ぎでおまさは命を落とす。
 何食わぬ顔で中森一家に草鞋を脱いだ市は、源八相手に嫌味たらたらの悪口雑言。そしてとうとう川に投げ込まれてしまう。水の中に飛び込み、沈没寸前の市を紋次が助けた。明け六つの鐘以来、魔法にでもかけられたのか、市は仕込み杖をぴたりと閉じたままだ。紋次には、市の不甲斐なさが腑に落ちなかった。
 追っても追っても紋次は市についてくる。奇妙な友情に結ばれ、足の向くまま二人の気ままな道中が始まった。市は紋次に、問わず語りに今は亡き母の話をする。母といっても血のつながりはなかったが、盲目で孤児の市を拾い、実の我が子以上の愛情で育ててくれた。「堅気で暮らすんだよ」と言い残して死んだ母のいまわの言葉を、はからずも踏みにじる結果となってしまった市は、せめてもの罪ほろぼしに、祥月命日だけは、どんなことがあっても殺生はすまいと、固く心に誓ったのだった。息を引き取ったのが明け六つで、ちょうど今日がその命日。
 「だから、暮れ六つまでは、仕込み杖もただのあんまの杖ですよ」と、見えぬ両目で遠くを見つめようとする市のなごやかな表情は、街道暮らしで荒れた若いアウトロー紋次の心にも、郷愁に似た懐かしさを呼び覚ます。
 二人は峠の茶屋で、父と待ち合わせしているという武家娘千代(今出川西紀)に会う。「長い浪人暮らしで貧乏をさせてすまなかったが、今度まとまった金が入るから、そなたにも花嫁衣裳もこしらえてやれる」と、人に誘われてもうけ仕事に出かけていった千代の父の姿格好を聞き、紋次にはぴんとくるものがあった。間違いない。中森一家の秋草一家への殴り込みに雇われ、市にたたっ斬られた浪人者だ。「父のかたき!」と、千代は無抵抗の市を斬りつけた…。