『新・座頭市 I』第13話「母の涙に市が走った」

原作:子母沢寛
脚本:柴英三郎
監督:太田昭和
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
志乃:北林谷栄
新田元八郎:松平健
又七:中条きよし
お京:森川千恵子
不破孫一:柳原久仁夫
紋次:金井進二
覚三:小瀬朗
万吉:長谷川弘
ほか


*以下、BSフジで再放映時になぜか(?)毎回アップされていた略筋です。本編との違いに注目!



座頭市勝新太郎)は、道中、一人旅の武家の老女新田志乃(北林谷栄)と道連れになった。志乃は、息子元八郎(松平健)の行方を尋ねていた。若輩にして剣の腕が立ち人物も切れる元八郎は、言われなきねたみを買い、血気にはやる彼は、脱藩して国表を出奔したのである。母の愛を知らず、肉親の縁にうすい市には、母のいる元八郎がうらやましかった。
 秋霜のように厳しく、春風のようにのどかな、弱くて強い志乃にかかれば、泣く子も黙る座頭市もほんの小僧っ子同然。箸の上げ下ろしにまでガミガミ言われながら、いちいちごもっともの志乃の小言を素直に聞いていると、童心にかえったような気がして、市は、斬ったはったで汚れた心のあかが落ちる思いだった。
 市と志乃はある宿場に入った。宿場にはぞっとするような殺気がみなぎっていた。一帯に逃げ込んだ生糸問屋殺害の犯人又七(中条きよし)の首に、大枚二十両の賞金がかかる。腐肉に群がるハイエナのように、賞金稼ぎの群りの中に元八郎もいた。はるばる尋ねてきた志乃に、表情ひとつ変えず、「あなたの息子は死んだ。ここにいるのは、生き餌をあさる人食い狼です」と冷然とうそぶく、身も心もすさみきった元八郎であった。市には志乃に対してなぐさめの言葉がなかった。
 市は、浪人不破孫一(柳原久仁夫)、やくざ紋次(金井進二)、破戒僧覚三(小瀬朗)ら賞金稼ぎ一味になぶりものにされかけている、飯盛女お京(森川千恵子)を助けた。お京は、市の前にからだを投げ出す。実は、お京は又七の妹だった。お京はるるとして又七の無実は立証された。真犯人は不破、覚三、紋次の三人だった。盗人たけだけしいとはこのことだ。罪もない者にぬれぎぬを着せ、おまけにそれを斬って賞金にありつこうとは恐れいる。市のするどい追及に三人は悪事を白状した。
 だが、元八郎はあきらめなかった。代官所が又七の無実を告示するまでは日数がかかる。それまでは又七の首には依然として賞金がかかったままだ。一度狙った獲者にはとことん食いついて離れないのが、プロの賞金稼ぎのプライドだ。「又七さんは、私がきっと守ってみせます」と、志乃はまなじりを決した。そして…。