若山富三郎『桜の代紋』(三隅研次監督)

くわえタバコで肩揺すらせてノッシノッシ、相棒のおやっさん小林昭二)と歩道橋を降り、パチンコ屋前を行きすぎるワカトミ。すると、横合いから飛び出してきたチンピラ4人組が、いきなり「肩が当たった」と因縁つける。

「おぅッ、おっさん! 人にぶちあたっといて、何の挨拶もなしかィッ!」
「お前ら、どこの組の若いモンや?」少しも動ぜず、悠然と聞き返すワカトミ&おやっさん
「わしら、西神会や。お前らナンや!」
桜組のモンや」ワカトミ、ニヤリとし、平然と一言。
それを聞くや、チンピラの頭、たちまち青ざめて平身低頭。
「……す、すんまへん!」
どやされて逃げ去ってから、イキがる弟分、不思議そうに質問。
「兄貴! “桜組”って、ナンや?」
「コレや!(手ぶりで警帽の紋章を示す) サツのマークやないけ! あいつらデカや!」
「けったぃクソわりぃッ!」

ワカトミさんのドスききまくりの鬼刑事が、大滝秀治(!)を親分に仰ぐ極悪非道なヤクザ相手に孤軍奮戦、八方無尽に暴れ回る大傑作。オレはたしか今は亡き文芸座2でカツシン監督・主演の『顔役』と二本立てで見た。2作とも、70年代邦楽界きっての才人・村井邦彦のモロ、レア・グルーヴ(?)なスコアがバックでイキに鳴り渡り、ファンならずともシビレること必至。2作共おハナシがまるきり同じせいもあるけどな(笑)
世の中にゃ、こんなイケてるシャシンがまだまだ転がってるってんだぃ! おぅッ、じぶん、観ずに死ねるけぇッ!