馬込<第2回>:大森〜南馬込〜中馬込

昨日に続き、いそいそと馬込散策第2弾に出立。昨日より2時間以上も早く、11時半に大森へ。昨日の反省を踏まえ、<江戸の坂>に書いてある順に回ることにする。いつもなんとなく帰路、寄り道する都合とかもあって、逆にたどってしまっているコトが多いのだ。
大森駅は降りるのはたぶん昨日が初めて。駅前をぶらつくが、吉野家(<牛丼食いおさめしたかった!)どころかめぼしい食い物屋は見つけられなかったので、質素にロッテリアでじゃがバタバーガーなぞパクつく。ルート確認をしてからいざ見参。駅前の天租神社を上がり、坂脇に埋め込まれた文士のポートレートを拝んでから闇(くらやみ)坂上へ。名前もいいが、曲がりくねり具合と長さが手頃で大変結構。池上通りの商店街を歩いたが、脇はみなみな高台にあがる坂道や路地、たまらず、ふぃっと目についた古アパート脇の路地に入っていくと、ちんまりした公園が。公園脇をぐるりと囲む小道を上がっていくと、また坂道があり、脇に細い石段が。フィルムがちょうどそこで切れたので交換してから、上がって行くと神社発見。これぞまさしく、童謡の文句じゃないけれど「♪天神様の細道じゃ」。坂道マニアになると、めぼしい坂や細道がありそうな場所をかぎわける力がなんとなく身に付くモノなんです。
熊野神社なるそこは、境内にあがる石段脇にもうひとつお稲荷がまつられていて、つごう、石段がふたつ並んでて、コレがまた興をそそる風情。で、降りた先は善慶寺なるゆかしき寺の境内裏の墓地脇で、墓地には江戸期、年貢減らしのために直訴して処刑された義民6人が葬られていて。これも<江戸の坂>に書かれていたスポット。
池上通りをしばらく行くと、子母沢寛旧宅と案内板が。文士旧宅散策は今回の目的ではないが、座頭市の生みの親にして新撰組の権威たる子母沢先生がかつて住んだる場所ならば、行かないわけにはいくめぇと、地図を見ながら訪ねてみることに。旧東海道沿いとゆかしき散策路をしばらく行き、緑道からちょいと入った中学校校門前にそこはあった。が、バカな中坊がやったんだろう、案内図は汚されまくりで文字は薄れて読めやしねぇ。まぁ、中坊程度に子母沢寛を語られても困るし、こういうのにいたずらするのは珍しくもないから腹なんざ立たないが、文化的な場所なんだから、学校側のほうで徹底管理すべきだと思うね。
旧東海道に戻ってしばらく行くと、すぐに臼田坂。坂道脇に古本屋があったのでのぞくてみたが、さしたるブツはなし。それでも、手ぶらで出るのはナンだったので、30円(笑)で出ていた「やぶれかぶれ青春記」(小松左京)「ドロレス・クレイボーン」(スティーブン・キング)「対談中国を考える」(司馬遼太郎陳舜臣をゲット。どこぞの浮浪者くずれが漁った文庫本のなれの果てかもしれないが、ま、それもよし。店主の爺さんはこっちにゃ目もくれず、半身で家の中のTVにぼんやり見入っていた様子だった。ま、いまさら商売やる気なんてあるわけないよな(笑)
臼田坂はだらだらと長い坂。ちょいと息吐きながら上って、地蔵尊の脇を入って、右近坂へ。坂上に小さな竹やぶある旧家があったり、趣きあるいい坂。坂道真ん中の細道を入って行くと、築30年くらいは経ってるかもしれぬ、古アパートが6、7棟ほど並んでいた。交通等の便はともかく、日当たりは悪くないし、場所柄もいいから、どうやら「地上げ」最中なのかどうか、軒並み空家状態。それでも、2、3軒居座っている(?)住人がいるらしく、小さな畑に洗濯物、TVの音が聴こえてきていた。
右近坂を降りて、大倉山公園に一瞬寄って臼田坂に戻る。坂脇のクリーニング屋だかの裏に、磨墨(するすみ)塚なる石塚がぽつん。源平末期、この近辺は源頼朝の配下の将、梶原景時の所領地だったらしい。磨墨は景時の息子・景季(かげすえ)所有の名馬で、この後訪ねた梶原氏の菩提寺萬福寺前にもその像が建っていた。萬福寺は平安以来の古式ゆかしき寺らしく、なかなか豪壮であった。梶原景時墓所にもいちおうお参り。源義経と敵対して、彼を追い落とした張本人として結局滅ぼされた梶原景時、どうにも日本史上は悪人扱いだが、この寺ではそんな悪名なぞ微塵も書かれてはいなかった。当たり前だが。墓所は巨木に覆われ、雰囲気を出していた。
昭和の芸人・松昇(だっけ?)の墓にも行ったり、その脇にいた野良猫の写真を撮ったりしてから、蛇坂へ向かう。ところがここで、<江戸の坂>の指示に従わず、間違えて環七通り沿いに出てしまい、たぬき山公園、山本周五郎旧宅(案内板は見つけられず)側を通ってひっかえす羽目に。おかげで冨士講燈籠が見られたし、どうせゆったりこの近辺を歩き回りたかっただけなんでよかったのだが、なんともはや。結局、さっき通った場所を通り、何とか蛇坂にたどりついた。坂自体は途中マンションが建って視界もよくなく、さして面白くもなかったのだが、こういうのはその場所にたどりつくまでの、えっちらおっちら行き当たりばったり、なんて具合のプロセス自体が楽しいわけなんで、苦にはならんのである。
昨日よりゆったりペースながら、さすがに歩き回ったので空腹を覚え、蛇坂下を降りてすぐ、新幹線のガードをくぐった第2京浜すぐ脇にあった醤屋(じゃんや)ラーメンなるラーメン屋に思い切って入ってみた。しょうゆベース、黒・紫・白の三種類なんてメニューもよかったが、木目調なドアや店のつくりもいい感じ、なにより、どうやら結構混むらしく、店の前に椅子が並べてあるのを見て、コレは話のネタにはなる、と判断した次第。*1
たまり醤油ベースの濃厚な味わいチャーシュー麺の黒を頼み、水さしに入った水を飲んでみて、まずその水がまずくないのに安心。10分ほど待たされて、いざ食。「濃厚な味わい」ではあるが、見た目から濃い感じはしないし、日本人好みの風味。たぶん白ネギと思うが、さくさくとうまい薬味がたっぷり入ってて、コレがかなりポイント高し。麺は細く、歯ごたえあり系。チャーシューは薄めだし、量も多くもないが、味は良好。あくまでオレの好みながら、中野「青葉」よりうまい! と判断。くりかえすが、単にオレの勝手な好みですよ。けっこういい店を見つけたかも。
その後、ガード脇を通り、昨日に続いて二本木坂上へ。昨日と同じく、歩道橋とかの上で新幹線をフレームに入れて夕暮れを何枚も撮った。画的には面白くないと思うが、日没前のいわゆるマジックアワーの玄妙なる光の具合とかが、手持ちのスナップカメラごときでもどれぐらい撮れるか等、試してみたかったのである。
帰路は都立南高校脇を通り、環七通りまでまっすぐ抜ける、アップダウンがやたら続く住宅街のなかの道をぶらぶら歩く。ジョギングコースとして最高かもしれないが、毎日走るのはけっこう大変かも。少々時間がかかって、馬込駅までたどりつき、とりあえず、二日連続のバカ歩きをいったん了。

*1:醤屋(じゃんや)ラーメンについては、こちらのレポートなぞも御参考までに。検索すれば出てきますけどね。<http://www.mendo.jp/shisyoku/zyanya/