15時半より、映画美学校第2試写室にて『めざめ』を見る。途中、一瞬気を失ったので以下確言はできないが、正直ハズレ。最近、試写に行くたびになにがしか「失望」を味わって帰る羽目になっている。
一言でいうと、闘牛場で闘牛士に重傷を負わせた雄牛が屠殺された後、処理されたその骨や肉が媒介となってつながり、綴られゆく総勢14人の群像劇。
キャストにスペイン人女優の名前が並んでいたので、純然たるスペイン映画と思ったら、台詞のほとんどはフランス語。アンヘラ・モリーはじめどう見てもスペイン人の女性がフランス語をしゃべるとどうにも違和感がある。コレなら日本語吹替のほうがずっと良いハズ。ハッキリ言って、個人的にはヨーロッパ映画が全て日本語吹替になっても一向に構わない。気になる作品だけは、個人的にオリジナルを字幕で再見するなりすればイイと思うので。前にも書いたが、字幕と画面の両方追うなんざ、至難のワザなんだからして。
台詞の問題だけでなく、映像的にも最初から乗り切れなかった。画がつくれていないわけではないが、それはキャメラマンの技量によるモノではないか。「狙い」が的確でない、というか、多分に感覚的でありすぎたのかどうか、状況がワンカットで端的に伝わってこない「微妙」というか、ほとんど意図不明瞭、不安定なカットばかり。
新人女性監督らしいが、インタビューで偉そうなコトを言う前に、アメリカ映画の古典でも見直して、物語の語り口を基礎から勉強し直せばどうか? と途中で思ったりしたほど。頭でっかちなつくりのわりには、(偏見ではなく)女性監督らしい妙に生理的、つうかやたらとナマナマしい画が思い出したように入ってくるのが、正直気色わるくもあり。監督の力量不足で思いつきのアイデア倒れに終わった失敗作、というかハッキリ愚作といっていい。
大体からしてよぉ、闘牛は食肉牛じゃないだろうが、バカたれが! 少なくとも、高級レストランで出す牛肉料理に使われるワケはなし。文学修士とってるインテリらしいけど、世間的な常識を知らぬようで。誰かツッコんでやらなかったのかよ、冷たいね、おたくら。
ったく、フランスの野郎(女だけどさ)ってな、得てしてリクツから物事組み立てようとするから世話が焼けらぁ。新人サンだから、女だからって甘く見ないよ、こちとら。
ユーロスペースさんの配給なので、例によって厚手のプレスには詳細かつ丁寧な解説、ストーリー、データが書かれているのだが、コレ、時々ありがた迷惑でもあって。今回は紹介文に「アルトマンの『ショート・カッツ』やPTAの『マグノリア』を連想させる」とあったのを読んで鼻白んだ。おいおい、おふざけでないよ。群像劇といえば何でも『ショート・カッツ』を出せばいいってモンじゃないだろ? 物語の構造がまるで違うよ。「牛」が物語の狂言回し的な存在になるなんてな、『ショート・カッツ』にも『マグノリア』にもなかったろうが。後の部分も、どうにも気恥ずかしいフレーズ(たかだか癲癇を聖痕(!)だなんだのと……etc.)の列挙で、なんだかな、でして。
どなたがお書きになったのか存じませんが、パンフレットの際には大幅訂正をなさったほうがよろしかろう。
それとも、ネオアカだか「リュミエール」の残滓でいまだ生きてるシネフィルやインテリは、ああいうの読むと嬉しがると本気で思っていなさるのかね? おととい来やがれってんだ、こんちきしょうめ。映画でゲージュツやろうってヤツにロクな手合いはいねぇな、ホント。
映画は断じて“アート”なんかじゃねぇんだよ!