『新・座頭市 II』第4話「蛍」


原作:子母沢寛
脚本:安部徹郎
監督:太田昭和
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
おたよ:大竹しのぶ
土田素玄:柴俊夫
達磨の重兵衛:遠藤太津朗
半造:田武謙三
おあき:菅井きん
お里:伊佐山ひろ子
おりん:三笠敬子
ほか


座頭市勝新太郎)が佐倉を通って成田に出ると聞き、途中の大堀宿の髪結床「松葉床」にいる妹おたよ(大竹しのぶ)に届けてやってほしいと、宿場女郎お里(伊佐山ひろ子)が何がしかの小銭を包んで渡した。おたよも目が不自由だという。市は会わぬ前からおたよに親近感をおぼえた。道中、市は、江戸で蘭法の眼科をおさめ、郷里の佐倉に帰る青年医師土田素玄(柴俊夫)と道連れになり、その飾りけのない人柄に強くひかれた。
 「松葉床」の半造(田武謙三)・おあき(菅井きん)夫婦は、鬼のような人間だった。おたよやお里のような不幸な孤児を、役所から下りる養育費目当てに拾って育て、一人前になると遊女に売り飛ばすというあくどさだ。盲目のおたよは、酔客相手の門付けで稼がされていた。お里が金を託すとき、親には内緒にと念を押したわけが分かった。盲目だが美少女のおたよに、土地のやくざ達磨の重兵衛(遠藤太津朗)が目をつけていた。
 おたよの目を土田素玄に見せる話に、目があけば重兵衛にもっと身代金をふっかけられるから、「松葉床」夫婦も飛びついた。
 診察の結果、素玄はおたよの開眼を確約した。こんなに親切にしてもらっても何も返すものがないからと、精一杯の媚態でぎこちなくすり寄ってくるおたよのあまりのいじらしさに、こんな心のやさしい少女を食いものにする「松葉床」夫婦に対して、市は新たな怒りが込み上げてくるのを禁じえなかった。手術は成功した。だが、「松葉床」夫婦の思惑ははずれた。目が見えないから意のままにできるが、目があけば、あの器量で黙って老人のおもちゃになるわけがない。きっと気ままが出てくる。身代金に色をつけるどころか、重兵衛は身請話に難色を示す。
 市が手術代の算段に賭場に上がっている留守に、「松葉床」夫婦は、おたよの目の包帯を力づくで引きはがした。おたよの視界に差し始めていた薄明かりが、永遠に消えた。鬼か、蛇か、けだものか、あまりの人非人ぶりに、市の怒りは一度に爆発した…。