『新・座頭市 I』第14話「雪の別れ路」

原作:子母沢寛
脚本:中村努、佐藤繁子
監督:勝新太郎
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
おゆき:吉永小百合
投節の宇之:林与一
中沢田の辰蔵:田中明
政吉:中村孝雄
お里:野村けい子
ほか

*以下、本編と異なる箇所あり。BSフジ放映時にHPにアップされていたあらすじ。


 座頭市勝新太郎)は、道中、三味線を抱えた鳥追い女おゆき(吉永小百合)と道連れになった。飲みっぷりも見事に大酒をあおり、「どうせ流しの門付女だもの、すれっからしさ」と、わざと伝法にうそぶくおゆきだが、根はやさしい女だった。名前と同じで雪のように心のきれいなおゆきと話していると、重なる旅にすさんだ市の心も自然となごんだ。
 おゆきは、旅の三味線弾き投節の宇之(林与一)の行方を捜していた。三年前、二人は結婚の約束までしたのだが、おゆきは病気の父を見捨てて旅に出るのがためらわれ、愛する宇之を裏切る結果となってしまった。別れてからいよいよ思慕は募った…。宇之からもらった思い出の品だという櫛を、さも愛おしそうに磨きながら、問わず語りに宇之の話をするおゆきの、遠い目つきと、小娘のように紅潮させたほおの色が、市にも目に見えるようだった。
 実は、宇之は、江戸前の三味線の音色で娘心をとろけさせ、いい男っぷりとさわやかな弁説を武器に、娘を騙しては遊女に売り飛ばす、凄腕の女衒。おゆきも、その手練手管の犠牲になりかけた一人だった。やくざ中沢田の辰蔵(田中明夫)が経営する茶店はたごで、あわや宇之の毒手にかかりかけた娘お里(野村けい子)を救ったことから、市は宇之の正体を知る。人間のくずのような男を一途に三年間も思い続けているおゆきの純情が哀れだった。あまりにも残酷だ。市にはおゆきに真実を打ち明ける勇気がなかった。
 市にこてんぱんにやっつけられ、辰蔵の血圧は上がる一方。だが、尋常の手段ではかなう相手ではない。奸智に長けた宇之に名案が浮かぶ。おゆきをつかって市をおびき寄せるのだ。恋しい男にやっと巡り会った喜びに酔いしれるおゆきは、簡単に宇之の甘言にひっかかった。そして…。