『新・座頭市 II』第16話「裸の泣き虫役人」

原作:子母沢寛
脚本:東條正年、中村努
監督:井上昭
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
田吉次郎:坂上二郎
おゆき:吉田日出子
代官:菅貫太郎
松蔵:南祐輔
下男:阿部昇二
茂兵衛:原聖四郎
三郎太:暁新太郎
喜平:藤川準
配下:鈴木義章
ほか


座頭市勝新太郎)の全面的協力で指名手配中の凶悪犯三郎太(暁新太郎)が捕まった。賊の身柄は折から一帯を見回り中の代官所役人山田吉次郎(坂上二郎)に引き渡された。酒もだめ、剣の腕前もだめ、好人物が着物を着たような山田は、あまり有能には見えなかったが、役人にありがちな居丈高な官僚臭はみじんもなく、市はその場で肝胆相照らした。市が我孫子を抜けて取手に出ると聞き、山田は我孫子宿の「松野屋」という居酒屋にいるおゆき(吉田日出子)に、残務整理で到着が二・三日遅れるむねの伝言を頼んだ。おゆきは山田の“婚約者”で、二人は近く祝言を挙げることになっていた。市は山田との再会を楽しみに、先に出発した。
 美人でもなく若くもなくおまけにター坊という男の子までいたが、庶民的で世間体を気にしない晩婚の山田が配偶者に選んだ相手にふさわしく、おゆきは心のやさしい気だてのいい女だった。ター坊も市によくなついた。市は三人の幸福を心から祈った。ところで、やくざ松蔵(南祐輔)と結託する山田の上司の代官(菅貫太郎)は、悪どく農民たちを収奪していた。汚職をうすうす山田が感づいた。無能だと見くびっていると、融通のきかない朴念仁だからこそ、かえって蟻の穴にならないとも限らない。祝言の引き出物に山田の昇進が決まった。初仕事として座頭市追討の命令が下った。邪魔者の山田を片づけるために、代官と松蔵が考え出した悪辣な罠だ。市の必殺の仕込杖の前に山田のへっぽこ剣術が歯が立たないことなど、はじめから分かりきっていた。