『新・座頭市 I』第16話「駆込み道中ふたり旅」

原作:子母沢寛
脚本:沖守彦、岩元南
監督:黒田義之
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
お香:加賀まり子
美濃吉:菅貫太郎
仙次:蟹江敬三
源八:小野川公三郎
喜六:遠山欽
松:石津貞義
久太:野内忠臣
船頭:浜村純
ほか


*例によって本編とは異なる場面が記載されたあらすじ。どこの誰が出した文字資料に基づくのやら?


鬼のかく乱で、座頭市勝新太郎)が原因不明の高熱に苦しむ無住の荒寺に、足抜けをしてやくざ美濃吉(菅貫太郎)一家に追われる、宿場女郎お香(加賀まり子)が逃げ込んできた。お香の寝ずの看病で市は元気を回復した。お香は、ばくちの借金のかたに、亭主の仙次(蟹江敬三)に遊女に売り飛ばされた哀れな女だった。これから“縁切寺”で有名な満徳寺へ駆け込むのだという。寺で二年暮らせば亭主との縁を切ってもらえるしきたりだった。寺まではまだかなりの道のりだ。
 「命を助けてもらったせめてものご恩返しに、寺に無事着くまでお供させてやって下さい」。浮世のあぶれ者同士、市とお香のおしどり道中がはじまった。ばくれん女お香の意外な心根のやさしさを知り、市はしみじみとした気持ちになった。行く手をふさぐ美濃吉一家を、再度市は蹴散らした。感謝のまなざしで体を投げ出そうとするお香を、「自分を粗末にしてはいけません。これから、縁切寺で生まれ変わろうというお人ではありませんか」と、市はやんわりとたしなめる。世の中にはこんな男もいるのか…男の醜さずるさをさんざん見せつけられてきたお香は、何か新発見をする思いだった。
 途中からしゃしゃり出たとんだ邪魔者が座頭市だと聞き、美濃吉のほおは引きつった。一見なよなよとして、いやになまっ白く、にやけた二枚目を絵に描いたような風貌は、渡世人には不似合いなように思えたが、残忍な目の光と、右半面のほおからあごにかけての生々しい刀傷に、ぞっとするような凄味があった。刀傷は市がつけたのだ。自分の容貌に病的な自信を持つ美濃吉には、耐えがたい屈辱だった。いわば市は不俱戴天の敵だ。美濃吉はサディスティックな笑みを浮かべる。美濃吉の陰湿で卑劣極まりない悪知恵に、さすがの市も…。