『新・座頭市 I』第3話「潮来の別れ花」

原作:子母沢寛
脚本:下飯坂菊馬
監督:井上昭
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
おえん:十朱幸代
独楽の喜三郎:津川雅彦
おたえ:津田亜矢子
稲葉左内:池田駿介
文五郎:江幡高志
蝶々のおきん:絵沢萠子
仙吉:石橋蓮司
ほか


潮来遊郭「田丸屋」へ上がった座頭市勝新太郎)は、相方の名前がおたえと聞き、その名前を一度どこかで聞いたような気がした。おたえ(津田亜矢子)は病みほおけていて、とてもつとめのつとまる身体ではない。見るに見かねて、おえん(十朱幸代)という女がみずから代わりをつとめる。ふっくらとしたおえんの手のぬくもりに、市にはある記憶がよみがえってきた。我孫子の宿の渡し場で、舟から降りる市に、やさしく手を差し伸べてくれた女があった。幸福そうな若妻にみえた。あの時の女だ。それがこんな場所で再会しようとは。その時、おえんは亭主の喜三郎(津川雅彦)と一緒だった。喜三郎が浪人稲葉左内(池田駿介)に襲われ、市は左内を斬った。左内は、「無念、おたえの敵!」と断末魔の叫びをあげて絶命。実は、ちょっといい男の喜三郎は、さわやかな弁説を武器に女をだましては女郎に売り飛ばすとんだ小悪党。おえんも、左内の妹のおたえも、喜三郎の毒手にかかった被害者だった。
 「田丸屋」は、やくざ文五郎(江幡高志)一家が取り仕切っていた。病気で使いものにならなくなったおたえは、一家の代貸しの仙吉(石橋蓮司)らになぶり殺しにされた。喜三郎の正体を知り、左内を斬ったことが市の痛恨事となった。だが、人間のくずのような喜三郎の甘言を真に受けてとことん尽くすおえんのいじらしさを思うと、市の仕込み杖の切っ先も鈍る。泥水稼業はしていても、おえんは人を疑うことを知らない、真菰の中に咲いたあやめのようにしおらしい女だった。市は、文五郎の賭場でぼろ勝ちすると、その金でおえんの証文を巻いてやる。旅のあんま風情にさんざん愚弄され文五郎の面目丸つぶれ。「あたしゃ見そこなったよ!」と、情婦の女つぼ振り師のおきん(絵沢萠子)は嫌味のたらたら。喜三郎に名案が浮かぶ。おえんに色仕掛けで市の仕込み杖を奪わせるのだ。そして…。