『新・座頭市 I』第7話「わらべ唄が聞える」

原作:子母沢寛
脚本:佐藤繁子
監督:勝新太郎
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
お艶:新藤恵美
甚左:殿山泰司
小浜の伝兵衛:草野大悟
松陰の五郎蔵:名和宏
喜助:遠山欽
政三:花岡秀
留次:馬場勝義
半助:新郷隆
ほか

若狭路に、奇妙な三人連れの旅人の姿が見られた。座頭市勝新太郎)と、まゆの仲買人の甚左(殿山泰司)と、それに、大事そうに人形を抱いた童女のように風変わりな姿お艶(新藤恵美)である。うつろな瞳に、不気味なうす笑い…。お艶は完全に正気を失っている。旅なれた甚左の洒脱さは旅のつれづれのなぐさめとなったが、お艶の常軌を逸した行動は、いささか市をへきえきさせた。だが、市を去って行った恋人と思い込み、慕い寄ってくるのを無慈悲に振り捨てるわけにもいかぬ。
 実は、甚左とお艶は、あらゆる殺しのテクニックを駆使、狙った獲物は百発百中という凄腕の殺し屋父娘。雇ったのは、盆ござのいざこざから市に片腕を切り落とされたやくざの親分小浜の伝兵衛(草野大悟)。市に恨み骨髄の伝兵衛に報酬を倍額はずまれ、父娘も必死だ。だが、尋常の手段ではかなう相手ではない。弱者や女子供に弱いという市の盲点を逆手に取り、お艶に精神錯乱を装わせ、虎視眈々とチャンスを狙っているのだ。人形には必殺の秘密兵器が仕掛けられていた。
 市の身辺を命の危険を感じるような変事が次々見舞うが、偶然が幸いして難を切り抜ける。こっちの正体を知ってか知らずか、無防備な市にお艶の張り合いが抜ける。世の中にはこんな男もいたのか。男は姿かたちではない。闘志喪失どころか、お艶は市に愛すら感じはじめていた。ビジネスの切っ先が鈍りがちなのも無理はない。華麗な殺しのテクニックはすべて失敗した。
 いくら父娘でも、非情な殺しのビジネスに裏切りは許されない。市を助けようとしてお艶は甚左に殺される。殺さなければお艶は甚左を殺すつもりだった。童女のように無垢な死顔だった。そして市は…。