市川雷蔵『ある殺し屋』

オレが知ってる究極の「仕事師」映画。

「同期の奴らはみんな死んでしまった……」

特攻隊の生き残りらしい主人公は内心ひとりごちながら、

「こんなヤツは生きていても仕方ないな」

と、冷然と言い放ち、殺しの依頼を引き受ける。依頼人小池朝雄扮するボス。連絡役をつとめさせられた一の子分、成田三樹夫雷蔵にすっかり入れ込み、弟子にしてくれとつきまとう。御多分にもれず、野心家の成田は雷蔵を裏切る。そんな彼との別れ際に、雷蔵が言い放つキメ台詞がコレ。

「色と仕事の区別のつかないヤツはごめんだな」

……かーッ、シビレるねぃ!
まさに面持ちで去ってゆく雷蔵を見つめる成田。これぞ男のダンディズム!
実はこの後、ふたりの間に割って入るフーテン娘、野川由美子が絡み、もうひとつオチがあるのだが、それはまた別の機会にでも。
少女時代の小林幸子が傍役で登場して、なんだか可笑しい。