豊川悦司『新・仁義なき戦い』(高田宏治脚本/阪本順治監督)

焼跡派世代の捨て鉢なパワーを描いた笠原和夫深作欣二の『仁義なき戦い』四部作とはまるで違い、阪本順治は自身のテーマ、高度経済成長が頭打ちした石油ショック期前後に成長したシラケ世代なガキどもの葛藤劇に引き寄せて描いた。大人になっても、いっぱしのヤクザになっても、どこまでもどこまでも、しょせんガキの部分を引きずってしまう、どうしようもないやりきれなさが執拗に映し出される。
クエンティン・タランティーノ布袋寅泰のギンギンなテーマ曲を『キル・ビル』で大フィーチャーして話題をまいたが、正直、いまのオレはガジェットてんこもり(なだけ)のQTワールドより、ぐちぐちといじましく、うっとうしく、のたうちまわっているザマをだらだら見せつけてくれる阪本順治の作品世界に共感する。
トヨエツが岸部一徳の歯に挟まったモノを楊子でほじってやるシーン、野郎的にはケツの穴がむずがゆくなるような、嫌らしさぷんぷんで印象に残る。アレは高田宏治の脚本で書かれていたシーンのように思うけど、もしかしたら阪本監督が撮ったシーンなのか? ちょっと興味がある。