片岡千恵蔵『妖刀物語 花の吉原百人斬り』(内田吐夢監督)

善良な商人なれども怪異な容貌ゆえに縁談のなかった中年男が、吉原のとある遊女に一目惚れ、家財を傾けるほど入れ込んだあげく、愛想づかしの憂き目に。赤子の身で妖刀と共に捨てられて、と不幸の星に生れついた男は最期、全身全霊をもって吉原へ殴り込んでいく。「廓の悪党ども、出てこいッ!」なんて悲憤やるかたなき叫びがとどろく。
日本映画界がいまだ真価を世界に知らしめずにいる真の巨匠、内田吐夢の意欲作ならぬ“異”欲作。重量感あふれる演出を全身でがッと受け止めてゆるぎもしない、千恵蔵御大の雄偉ぶり、素晴らしきかな!