ピンク・フロイド「あなたがここにいてほしい」

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……誰にでも、「歌」にしてみたいヒトやモノがあったりする。ピンク・フロイドの場合は、シド・バレットだった。狂った、ダイヤモンド。

じゃあ、つまり君は天国と地獄を区別できると思っているわけか
青空と苦痛の違いがわかるって?
青々とした野原と鋼鉄のレールも区別できるのかい?
笑顔とヴェールは?
君は区別できると思っているの?


やつらは、君に英雄たちを亡霊と取り替えさせたのか?
木々の代わりに熱い灰を
涼風の代わりにたわごとを
変革の代わりにほんの気休めの慰めを与えたのか?
そして君は、檻の中で主役と引き換えに、
戦争でのチョイ役を手放したのか?


ああ、君がここにいてくれたら
僕らはふたりとも、金魚鉢の中で泳ぎ回っている迷子に過ぎない
年がら年中、同じ場所を繰り返し走り続けている
そして僕らは何を見つけた?
昔と変わらない不安だけ
君がここにいてくれたら
PINK FLOYD“Wish You Were Here”
ピーター・バラカン訳(「ロックの英詞を読む」集英社インターナショナル所収)

「炎〜あなたがここにいてほしい」の日本盤等をお持ちなら、山本安見氏の対訳と比べてみると一興。山本氏のほうが文学的で格調高いが、意訳しすぎな面もあるような気配。
ロックファンには目からウロコな名著「ロックの英詞を読む」でも白眉といえる選曲のひとつ。ちなみに、ピーター・バラカン師匠は、

「さて、これはシド・バレットのことを歌っている曲なのかどうか。このことに関してはあまり限定しないほうがいいように僕は思います」

と語っているが、はたして? 
まぁ、アルバム「炎」でも「葉巻きはいかが?」なんて自分たちの曲だしね。「ようこそ機械」(<邦題忘れた)なんてシドとは全然関係ないしね。とにもかくにも、ロジャー・ウォーターズのメインテーマ、“疎外感”が前作「狂気」よりもずっと明確に、ブルージーに描かれた一枚ではあるんでしょう。
……ンなコト書いてたら、なんか歯が痛くなってきたぜ(苦笑)。拾った汚い画像を貼ったバチかな? いててて。