若き日、巨匠・森一生に見い出され、大映で活躍後、勝新太郎率いる勝プロで文字どおりカツシンの右腕として、縦横無尽/融通無礙なるハサミをふるった、邦画界が誇る天才編集技師、谷口登司夫師父。カツシン主演の『座頭市』シリーズはじめ、『子連れ狼』『警視K』といった勝プロ作品の編集をほとんど手掛けている。
全く語られていないが、あの北野武に編集術を伝授したのも谷口師父である。たけしの監督第2作『3−4X10月』で組んだ師父は、“世界のキタノ”に初めて編集の妙味を開眼させたのだった。コレで編集の面白さに目覚めた北野武は、以後、基本的に自分自身で編集を行なうようになるのである。
不世出の天才・勝新太郎の映画魂の「真髄」は、北野武にまごうことなく受け継がれていたのだ。心ある映画ファンよ、今からでも遅くない、この知られざる事実を御記憶されたし。
映画の歴史は監督やスターによってのみ受け継がれるのではない。関わったスタッフすべてが、歴史をつくりあげるのである。