往時茫々、あの日あの時。

くさくさした気分を晴らすため午後は外出。ふと、初上京の90年から5年間住んだ田無に久々に行ってみようと思い立つ。昔なじんだ町並みを歩くうちに、忘れていた「初心」のカケラのようなモノでも思い出すのではないか? などと淡い期待もこめて。
そんなわけで、季節外れの陽気のなかを、鷺宮までテクテク歩く。向かい合わせにこの土地も長い旧家なのか、いやに立派な屋敷が向かい合わせに並んでいて、森の中の小道風に並んでいる一角があった。写真におさめたかったくらい。
鷺宮から急行で10分足らず、田無へ。駅構内もいきなりエスカレーターができていたり、改札前にロッテリアやカフェもできたりとエラく綺麗に改装されまくっていたのに改めて驚く。たぶん今でも都内最高の人口密度を誇る地域だろうし、乗降客の多さは尋常でないのは知っているが、それにしても。オレが引っ越した直後から、駅前の再開発も急激に進み、北口駅前の様相も一変、かつてのゴミゴミした面影は完全になくなってしまった。今はそういや、ココも西東京市っていうんだっけな。なんとも無個性、無味乾燥、人の歴史を感じさせない、味気ねぇ名前になったモンだぜ。
通学通勤時は南口の線路ぞいの道を使っていたので、その道をたどり、かつてのアパートへ。所要時間5分足らずだが、線路ぞいで景観も何もないのでやや長く感じる。阿佐ヶ谷に越した後、市役所に移転手続きをしに来て以来だから、来るのはたぶん8年ぶり。線路ぞいにあったアパートは壁を塗り替えただけで周囲の様子は変わっていなかった。二階の真ん中にあったかつての我が部屋の前まで行き、さしたる意味もなく、現在住んでいる人の名前を確認。オレと下の名前が一字同じなのがちょっと面白かった。オレから数えて何代目にあたるのか知らないけど。正面から部屋を見ようと、前に回ろうとしたら、隣の飲み屋が大型犬を飼うようになったらしく、いきなり吠えつかれて憮然。空き巣が増えて、物騒になってきたからかどうか知らないが、奥にはアパートもある「通り道」に犬をつないでるんじゃねぇよ、バカたれが! まぁ、どうせ今後来るコトはまずないからいいんだが。てなわけで、ホントはしばらく元いたアパートの前でしばし追憶にでも浸りたかったのだが、落ち着かないので再度駅前に戻る。
途中、かつてサークルで同期だった、今やアルバムを何枚も出して、一部では知られるようになった音楽家(検索でたどられるコトもないだろうがあえて匿名にしとく)が住んでいたアパートを探すが、なかなかたどりつけず。東京では珍しくもないが、道がかなり入り組んでいるのである。8年ぶりに歩くトコだから、道自体を忘れてたし。もっとも、田無時代は今とは違い、アパートに終日こもったりせず、大学に行くか、映画館に通ったりしていたので近所を散策するコトもあまりなかったのであった。<バカ歩き>しまくるようになったのは阿佐ヶ谷に来てからのコトなのだ。
北口では○明党の○崎代表が演説中だった。実は西武沿線ぞいにかなり多いと聞く○会員が集結(<正確には「動員」だろうな)したのかどうか、周囲は年輩の御婦人方中心にぐるり、と人垣ができていた。スーツ姿の警備担当者や警官も大量に張っていて、なにやら物々しい雰囲気。警官は通行者の誘導も兼ねていたのだろうが、それにしても警備に人員を割きすぎではないのか? 以前からこの政党にはどうにも不信感しか抱いていないのだが、いかに政教分離の原則を守っていないとはいえ、信教は自由ではあろうから、コレ以上は何も言うまい。ただ、通行者の邪魔になるまで人を集める、もとい人が集まるのは問題だと思うぞ? さすが「折伏」やってる連中だけあって、遠慮ってモンがねぇや(罵言)大音量で耳が潰れそうになったぜ、馬鹿どもめ。貴様らだけが救われてたまるかってん堕地獄道
遅い昼飯がわりにマクドで月見チーズバーガーをパクついてから、かつて歩いた北口の青梅街道周辺を散策。しかし、学校帰りの高校生に夕食の買い物に出歩く主婦が混じり、どうにも人が多すぎ。人込みだけでなく、町自体は綺麗になり、店も増えたが、面白い町並みになったかというと、どうも違う。かつて通ったビデオレンタル屋<Will>が今も営業中だったのを確認して、懐かしかったくらい。いかにも西武沿線の典型的なベッドタウンらしい、退屈な町だ。沿線住人の方にはすまぬが、オレはそう思う。
例のベーシストさんがたぶん今も住んでいるハズのアパート前を探しあててから、土産なしで帰るのがイヤさにブックオフとメガマートなる小さな中古CD屋を物色。
★プリンス&ザ・ニュー・パワー・レボリューション「DIAMONDS & PEARLS」/ザ・ポリス「ロクサーヌ」(シングル)/「最新SF&スペクタクル」(各100円)
アラン・パーソンズ「オン・エアー」(400円)
マイク・オールドフィールド「アマロック」(500円)/「THE SONGS OF DISTANT EARTH」(600円)

店の規模の割には、意外やいいブツも並んでいたし、値段のつけ方も良心的で好感度大。でも、ヒマそうにしていた店員の兄さんに「サービスカードはお持ちですか?」と聞かれたのに、つい、「いや、こちらに来ることはもうたぶんないと思うので」と正直に答えてしまった。もうちょっと愛想よく答えればよかった、と後悔したが、ただのいちげんさんだったってコトで勘弁してください。実際、絶対もう行くコトないし。


かつて住んだ町再訪問がどうにも盛り下がる結果になったので、このまま帰るのが惜しくなり、かといって西武線に再び乗り込むのも芸がないように思えたので、思い立ってバスで武蔵境まで出てみる。ところが、これまた大失敗。田無以上にナニもない、散策し甲斐のない町並みだったのである。住んでいる方には申し訳ないが、ホントだから仕方ない。北口はお愛想程度の商店街が並ぶだけ、南口はイトーヨーカードーがだらしなくで〜んと居座っているだけ。オレのお目当ての古本屋とか中古CD屋といった、趣味性の高いお店はまるでなし。国際基督教大学とか学生は結構多いハズなのに。で、ふらふらしてるのは学校帰りのいかにも頭の悪そうな高校生だけ。ココだけにとどまらず、文化的レベルとかそんなのじゃなく、いかにも粗製濫造された町並みが増えればふえるほど、馬鹿も増殖するのだな、と(我が身を思いっきり棚にあげて)再確認。こんな特色もなさげな町並みを、思春期から毎日イヤでも目にしてしまっては、気持ちも荒れてくるのは間違いないんじゃないかって。
ココはボンクラのアホ雑記に過ぎないが、ボンクラの勝手な考えもたまには書いてみよう。風景の荒廃は人心をも荒廃させる。行政は町の景観を少しでも真の意味で「豊か」にすべく、真剣に取り組むべきではないのか? 何かと批判の多い公共事業だが、それが「人心を豊かにする」コトにつながる、有益でさえあるモノなら、大いにやってもいいように思うのだが。残念ながら、カネを動かさずして何かを変えるってのは現実には難しいわけだからねぇ。念のため、ことわっとくが、田無の駅前みたいにでっかいショッピングモール建てたり、綺麗に再開発したらイイってコトじゃない。どこを見回しても似たような店が飛び込んでくるような特色のない町づくりはやめろ、と言ってるのよ。


今回の<バカ歩き>はどうも不完全燃焼のまま終了。こういうの、かえって疲れるモノで、帰って入浴後、すぐに寝入ってしまい、気付いたら久々に6時間ほど途中で目を覚ますこともなく、眠ってしまっていた。今もまだ眠い、つうか身体が重いが、はてさて今日はナニをする人ぞ、と。