『新・座頭市 I』第25話「帰って来た渡世人」

原作:子母沢寛
脚本:東條正年
監督:南野梅雄
音楽:村井邦彦
制作:勝プロ/フジテレビ


座頭市勝新太郎
松五郎:宮口精二
佐太郎:中山仁
浅次郎:石田信之
藤吉:草野大悟
おふみ:井原千寿子
辰蔵:玉川伊佐男
おつや:八重垣百合
ほか


座頭市勝新太郎)は、久しぶりに昔世話になった老やくざ松五郎(宮口精二)を訪ねた。松五郎は一家を解散、やくざを廃業していた。
 松五郎には、佐太郎(中山仁)と浅次郎(石田信之)という二人の息子があったが、次男の浅次郎は生まれつき頭がよく、学問を好んだ。秀才ぶりを見込まれて庄屋の家に養子に入ったその浅次郎が、勉学のかいあって名字帯刀を許され、代官所の下僚として士分に取り立てられた。ついては実父がやくざではまずい。息子可愛さから松五郎は縄張りを新興の辰蔵(玉川伊佐男)にゆずると、すっぱり稼業から足を洗ったという次第だ。トンビがタカを生んだと噂され、松五郎は得意だった。その親ばかぶりが、生まれて父の愛を知らぬ市にはうらやましい限りだった。
 浅次郎の担当する道路工事を辰蔵が請け負った。海千山千の辰蔵が世間知らずの浅次郎を籠絡するのなど何の造作もない。金と女と酒で浅次郎を手なずけ、不正のしたい放題の辰蔵は、職務上問責する浅次郎に同じ穴のむじなだと開き直る始末。へたをすると自分の首が飛ぶ。浅次郎は松五郎に泣きついた。浅次郎の顔を立ててやってほしいと下げにくい頭を下げる松五郎を、縄張りをゆずってもらった恩も忘れ辰蔵は鼻であしらうばかりか、座頭市の首と引き換えなら話は別だと、無理難題をふっかける。それでなくとも、強きを助け弱きをくじく辰蔵一家の最近ののさばりようは目にあまった。
 そんな時、渡世の意地からよんどころなく人を斬り、長い草鞋をはいていた佐太郎が、故郷見たさに帰ってきた。懐かしい恋人おふみ(井原千寿子)に会える楽しみもあった。だが、あふみの心はすでに浅次郎に傾いてしまっているのを知り、佐太郎は、誰にも会わずにそのまま故郷をあとにする決心をする。そして…。