ハイパー箏奏者VS世界的チェロ奏者対決!@吉祥寺GRID605

hibiky2006-10-21

吉祥寺・GRID605で、八木美知依さんとトリスタン・ホンシンガーの競演を見てきました。以下、覚え書きなど。

追記。ホンジンガーが正しい表記のようですが、あえて訂正しないでおきます。
GRID605は大友良英氏がもともとスタジオ用に借りた吉祥寺駅前の雑居ビルの一室とのこと。靴を脱いで中にあがるという、ホント、実際に人ひとりが住めるくらいのスペースしかなく。噂は聞いてたけど、実際行って驚いた。冗談抜きでたぶんもともと二間で9畳程度、要するにウチみたくフツーのアパートよりちょい広い程度。

しかし、目にすることができたパフォーマンスは、現時点では今年では白眉といっていいもので、驚かされました。
1セット目は先日八木さんも競演された近藤秀秋氏とのデュオ。クラシックギターをちまちまと(?)爪弾く近藤氏*1を尻目に、ホンシンガー氏はいきなりテンション高い演奏を開始、うなり声あげて足を踏み鳴らして弾きまくる姿に瞠目させられまくり。
ハコというにもあまりに狭い演奏スペースに対する苛立ちのようにも思えなくもなかったんですが(苦笑)、とにかく情動の趣くままのごとくチェロをかき鳴らす姿に感動しきり。
、、、何と云うか、おのれの内面にあったネガティヴな感情が腸からつかみ出されて、一瞬凶暴な気持ちにさせられて血の気が引くんだけど、即時に浄化されるような、そんな過激な音が連続する演奏でした。少なくとも、私自身の好む、真に攻撃的で先進的な音では間違いなくあったなぁと。
なるほど、コレはたしかにポップ・グループの超名曲「We're All Prostitute」の録音に参加してた(!)というのも頷ける話とまず納得。ロックヲタな私としては、まずはエリック・ドルフィーよりも先に、まずはポップ・グループですから(笑)

2セット目は八木さんとホンシンガー氏のデュオ。ホンシンガー氏は終始テンション高い音で聴かせてくれただけに、八木さんとの競演が楽しみでならず。
開始を待ってたら、いきなり「べーん♪」と音がして箏の弦が切れる(外れる?)ハプニング。よくあることらしいのですが、個人的には初めて。どんな具合に直されたのか見ていようと思ったんですが、残念ながらよくわかりませんでした(恥)

1セット目とは違い、ホンシンガー氏はノイズから開始。しばらく静かに音の鳴らしあいが続いた後、演奏はそれと気づかせないうちに徐々にヒートアップ。
水曜日の演奏は八木さんはシンプルな構成で進み、それに鬼怒無月氏が乗っかる形でうねるようなギターソロを弾きまくるという「やんちゃ」なスタイルで、リラックスした演奏というか、見てるこちらも笑いが漏れるような展開だったのが、昨夜は一転、双方共にテンション高く。

八木さんはいつものようにスティックや手製すりこぎ(?)、コントラバスの弓と小道具を駆使して自在な音づかいで勝負。日々研鑽を重ねられているというトリルも絶妙な具合に決まってた感じ。さらに、昨夜は両刀使い(?)がいつもより多く、片手が遊んでいるなんて状態がほとんどなかったような(?)
どうやら横目で時折それらをチェックしながら、ホンシンガー氏も弓をかき鳴らし、うなり声あげて対抗。ほんの間近で見ているだけに、双方のテンションの高まりがこちらに直接的に伝わってくる。パフォーマンスとしても、音としても、極めて興味深い時間が続いたと思います。双方我の強さの主張だけで終わらず、音として絡みあってたあたりも1セット目とはまるで違いました。
3セット目はトリオ。八木さん&ホンシンガー氏の演奏が終始突っ走る展開で進み、ホンシンガー氏は足踏みの音も高らかに、歌声(?)の調子も御機嫌な感じでリードし続ける。いやぁ、聴かされました! 見に行ってよかった! またひとり、追いかけたいミュージシャンができた感じ。


*1:近藤秀秋氏はほとんど出番がなかったというか、単純に音が(間近で聴いてるのに)全く聴こえず、こちらとしては評価不能状態。入ってくるなり、「(客が)近い!」とCMの井川遥みたいなコト呟いたのだけ記憶あり(笑)近いも何も、部屋で一緒に聴く臨場感で勝負するハコなんでしょうな。