地獄に堕ちた勇者ども。

または『死体と遊ぶな子供たち』<まんまや
イラクの米兵が戦場の惨死体をポルノサイトに投稿していた(している?)そうな。蟲博士のトコで、大海赫「ビビを見た!」を思いがけずお教え下さったid:nankadoさんのトコで知った。食事をされてる方、おぞましいモノに耐えられない方は、リンクをたどられないように、念のため御忠告など。
http://d.hatena.ne.jp/nankado/20051008
http://blog.goo.ne.jp/beach_girl/e/338fc190b8b10fdb5328694cf9bb6ef4

……オレは6枚ともすべて、キッチリ見せて頂いたが、正直、オススメできない。
かつてベトナム戦争の戦場写真で、米兵がバズーカで半身を引き裂かれて白眼を剥いたベトコンの死体を誇らしげにつまみあげている写真を思い出した。
それでも、一見すれば、少しばかりは我ら人間が抱える暗黒面の一端に触れ得るのではないか。問題の米兵やポルノサイト開設者にとって、バラバラ死体なぞほんの軽〜い存在でしかない。その死体が彼らの肉親や同胞にとって、いかに底知れぬ怒りを呼び起こすかといった、そんな程度の想像力も、常識人としての感情や理性も、ハナから(おそらくは幼少時から)失っているのだ。これは彼らが畜生だからではない。我々と同じ、まごうかたなき人間だからだ。畜生は死体を弄んだりはしない。そんな無益で残酷なことをして、なおかつそれを楽しめるのは人間だけだ。悲しむべき現実だが、そういうことだ。
いわゆるレッドネックや貧困にあえぐ青年たちが事実上「徴兵」されて戦地へ送り込まれている……といった実態は『華氏911』でも描かれていたが、コレほどまでに兵士たちの心はすさんでいたとは。。。日本軍もかつて七三一部隊で街で拉致した人々を人体実験したりしていたワケだが、やはり人というものは、条件さえ整えば、いくらでも残酷になれるということか。


若き日の高島礼子が女医役で出演している、『さまよえる脳髄』(萩庭貞明監督)というB級サスペンスがある。そこで嶋田久作扮する心理学者が悪名高い<アイヒマン・テスト>を見せるシーンがある。実験の詳細などは検索でもして自身で確かめて頂きたいが、自らの善良さを信ずる人間ほど、被験者の苦痛に快楽を覚えていくかのごとく、実験にのめりこんでいくというデータは、いったい何を示しているのか。我々と殺人鬼や狂気の兵士といった「人畜」との間に、実のところ、さしたる「境界」はないというコトではないか? 一定条件さえ与えられれば、人間は何を仕出かすかわからない。少なくとも、自分自身を過信することなく、日頃からそうした恐怖心だけは常に忘れないでおきたいと思う。
残念ながら、我々は、死体を弄ぶ米兵を見下して笑える立場には、まずないのである。オレだけは、私だけは違う、と無理に思い込まないところから、改めて認識を新たにしていけたらと思う。時と場所に選ばれてしまえば、いつでもヒムラーアイヒマンにはなってしまう。宅間守宮崎勤や東くん、はたまた女子高生コンクリ詰め殺人犯一味にもなり得る。それが現実。もちろん、大多数の人間にとって確率はゼロに近いが、「絶対にあり得ない」などということはない。

さまよえる脳髄 [DVD]

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ややテーマ的に外れる面もあるが、人間の持つ残酷さを余すところなく描ききった野心作としては、高橋洋脚本によるVシネマインフェルノ−蹂躙−』という凄まじい一品がある。鬼才・高橋洋の脚本作ではおそらくベスト3に入る傑作。機会あればぜひ御一見あれ。