平田弘史「茶筅髪禁止令」

「武士の誇りや魂などは髪形ひとつで失せるものでもあるまい」
「形 変われば心まで変わるのが人の習性(ナライ) 取り払えば早晩武士が軟弱化するは明白」
(略)
「環境・状況・状態……つまり形が変わればこれ程のお人でも声すら出ぬ……」
「心底いかに士魂を燃やすといえども 形 現わさずば士魂無きに等し! またその逆なり!!
甲冑を着ければ心が勇み立ち、礼服を着れば心しまる如く、勇猛なる茶筅髪を取り去る事は武士が勇武の士魂を失うに至るも同然!」

小生、クールビズ大賛成な合理的人間ではあるが、肝には銘じておきたい名言なり。だらけた格好しかできない人間は、結局、中身もだらけたままで終わる、というコト。中央線人民にとっては耳痛すぎる言葉。キメる時はキメないとダメ、身につけるモノもすべて他人のためならず、TPOをわきまえてこそ、一個の「士」なり。*1
平田弘史作品だと、読めたなかではコレが一番好き。あとはやはり、少々あまりに残酷不条理劇に過ぎるというか、なんというか。


*1:ココでいう「士」とは侍だの武士だのという意味にあらず。簡単に云うなら、「志持ちて日々を生きる人物」とでも言えようが、詳しくは司馬遼太郎でも読んでくれたまえ。愚劣なる政治屋や企業屋どもが安易に利用するゆえ、かの尊敬すべき国民作家の真価、あまりにあまり汚されている実情に、我、常日頃より憤りを覚えるなり。。。