YMO「L-R TRAX Live&Rare Tracks」

ミクシィのほうに載っけた覚え書きだが、こっちにも。
デジパック4ケースにCD8枚。見開きスリーヴに、ハリー・ユキヒロ・教授そしてYMO3人そろってと、ズラリ特写全開! な未公開写真がたんまり入ってて嬉しくなる。
解説書はマニアほど細部にツッコミ満載、読みではあり。もっとも、インタビュー起こしの文章中心に構成されてるうえ、編集のプロがついてなかったせいか、改行が全然なかったりとゴチャゴチャなのが惜しい。今回のYMOに限らず、細かい話だけどさ、いくらCDの解説書だからって読み手を無視したような、デザイン先行すぎるつくりはしないで欲しかったり。
あ、細野氏の92年収録インタビュー横の写真はけっこう可笑しい。矢野顕子渡辺香津美もまじえたスタジオショットで、教授がなぜか「PLAYBOY」開いてにたついてるという。開いてる箇所からしてピクトリアルのトコじゃないけど、横から覘きこんでるハリー氏の目が妙にマジで(笑)

肝心の音源はというと……。

DISC-1:「LIVE AT KINOKUNI-YA HALL」[1978]
以前は試聴しかできてなかったので、今回が初聴取。1曲目「ファイヤークラッカー」、出だしから音が同期してなかったり、3曲目「中国女」でユキヒロのフーマンチュー歌唱が録音状態の悪さゆえ聴こえなかったりと粗い面が目立つのがちょっと残念。それでも、可能性未知数だった結成当時の気負いみたいなのが、全体にハシリぎみっぽい演奏から伝わってきて、微笑ましい。渡辺香津美のギターはとりあえず、ノリノリギンギン、サイコーです!

DISC-2:「LIVE AT GREEK THEATER」[1979]
ごぞんじ海外初ライヴ。映像でみたことはあったが、そこではあまり聴取できなかった細かい音色の妙味がクリアに体感できたり。ユキヒロ氏が繰り返しインタビューで語ったりしているが、とにかく機材の不安定さにはハラハラされどおしだったらしく、肝心の演奏以上に松武英樹氏操作する機材の調子をチェックすると、なかなかスリリング。時々裏返ったりハシったり、ヘロヘロな機械くんをものともせず、平然と演奏する3人が凄い。惜しむらくはユキヒロのボーカルがまだいまいちってトコ。か細いブライアン・フェリーみたいな英国ミュージシャン系の歌唱スタイルなんで、それほど違和感はないンだが、それにしても……下手だ。コレ、当時のほかのアルバムでもけっこうわかりやすく目立つ箇所ではあるんで、メンバーが封印したくなるのもわかるような。機械の不調に合わせて、演奏が錯綜ぎみになってるトコもある気配だし。ユキヒロ&ハリーのリズム隊は鉄壁なんだけどね。

DISC-3&4:「FAKER HOLIC」[1979]
「公的抑圧」での渡辺香津美のギター部カットゆえの不自然な音に、どうもなじめずにいたオレ、91年発売時に買って、かなり聴き込んだ。今回はリマスターのおかげで一番の聴きもの、香津美氏のギターがシャキシャキ前面に出たうえ、ハリー氏のベース、さらに矢野顕子のバックコーラスまでバッチリ。嬉しいね。欲を云えば、どうせならこのへんで未発表音源はあるハズなんだから、ボーナストラックを追加すべきだろう、と思ったりもするが。

DISC-5&6:「WORLD TOUR 1980」
オレ的に一番聴きたかったブツ。オープニングの教授の名曲中の名曲「RIOT IN LAGOS」のカッコ良さ、ぶっとびモン。テクノ・ファンク! コレ、聴けるかぎりのバージョンをチェックしたい! もっとも、これまたユキヒロ氏のボーカル曲がちっと不安定ぎみで、惜しい。ギターは故・大村憲司、流暢に弾きまくる渡辺香津美よりも、装飾音風に地味ながらもシャープに煽るトコはあおるようなバッキングで渋い。しかし、聴けば聴くほどユキヒロのドラミングこそがYMOサウンドの「核」のような気がしてくるな。こンだけ硬質なビート叩き出せる人ってなかなかいないモンなぁ。

DISC-7:「ONE MORE YMO
ココからが箱ものとして問題のディスク。YMOのライヴの歴史を総括したいなら、既に発売されたベスト盤を再録してお茶を濁すようなコトするなってぇの! しかも半分近くが同じ箱に入ってる曲と重複してるってぇなぁ聞いたコトねぇ、サギやろそれはッ! オレは買ってなかったからまだありがたく聴けるけど、マニアほど今回のブツを買い控えするってなわかるな。
とりあえず、中期YMOの名曲「MASS」「PURE MUSIC」「SOEUL MUSIC」はサイコー。要するに、メンバーが現在も唯一認めるライヴDVD『ウィンターライヴ'81』を買え! ってコトなんだろうな。

DISC-8:「RARE TRACKS and more」
コレまた近来稀にみる意図不明な選曲、ホント、寄せ集めたという感じ。微妙なバージョン違いなんてこういうライヴ集大成ものには入れなくていいから、「ウィンターライヴ'81」あたりの未発表音源を掻き集めて欲しかった! メンバーの御墨つきを得ないリイシューは結局、「画竜点睛を欠く」どころか、肝心なトコで購入者を失望させるから困る。
つくづく、旧アルファ〜現ソニー、販売サイドの折衝能力のなさに嘆息。


……とまぁ、聴き込んで追究するほどに相当、文句を云いたくなる内容ではあるんだけど、とにかく音質は抜群に良くなってるし、今までライヴ盤を買い損ねていたオレみたいな中途半端なファンには、まとめ買いできるだけでもありがたいブツではあるのはたしか。ただ、こんなのはすでに全部持ってる! って方は買わなくてもよろしいかもと。いずれにせよ、ココまでいまだファンを熱狂させる音楽集団はいないよなぁ。すげぇモンだ、なぁ。