マキノ雅弘

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♪バカは死ななきゃァ、治〜らぁなぁぁ〜いぃぃぃ((C)広沢虎造
邦画黎明期からギョーカイを担った、クロサワなんてメじゃない日本が誇る<映画の神様>、マキノ雅弘。代表作は数知れずだが、ひとつ選ぶとすりゃァ、やっぱ日本人なら見ずに死ねるかッ! 笑いあり涙あり義理と人情チャンチャンバラバラ娯楽作の鑑『次郎長三国志』シリーズ(東宝52〜54年、全9作)だろうねェ。
天下無双の大名優モリシゲこと森繁久彌が出てるワケだが、演ずるはもちろん森の石松だッ! 第2作終盤、『次郎長初旅』で颯爽と登場。ところが、モリシゲが出てくるまでがやたら、ダラダラと長い。ラッシュ見ていたモリシゲたまらず、監督にぼやいた。

森繁久彌「カントクぅ、なんすかコレ? オレが出てくる前、ダラダラ長ぇんじゃありませんかぃ?」
神様マキノ、くわッと目を剥き、脚本丸めてモリシゲの頭をピシャリとはたいて一言。
「アホ! お前のための<ダレ場>やないかい!」

簡単に説明するとや、映画は<見せ場>と<ダレ場>、この組み合わせでできとる、と。それがいわゆる<マキノ節>の根幹ゆうワケやね。見せ場というのは大体チャンバラだの観客の注目を引きやすい派手なシーン、ダレ場というのは、逆に観客にじっくり見てもらうかしないともたない男女の愁嘆場だったり。しかし、一見ダラダラと退屈なダレ場がないと、映画は一本調子でつまんないシロモノになるっつうわけだ。物語は山あり谷ありあってこそ、ダラダラしたシーンの後にアクションふんだんなシーンが出てきてこそ、オモロイっつうわけだ。観客の、人間の心理を突いた真理やね。
ちなみに、このマキノの甥っこが長門裕之津川雅彦兄弟。で、アムロちゃんやスピードを世に出した沖縄アクターズスクールの創設者はマキノの孫ですな。マキノの弟子は笠原和夫岡本喜八澤井信一郎等ギョーカイには数多いが、現役ではもはやいなくなったのが残念。世代を超えて受け継がれているマキノ節、これからも末永く受け継がれるべし。ハリウッドだかなんだかのワケワカなシナリオ作法学んでいる場合じゃないと思うけどね、マジ。
何度でも書くけど、映画の脚本なんてな、いくら勉強したって書けるモンじゃないし、そんな泥縄仕立てな出来損ないなんてよォ、誰も見たくないだろうってぇの。最近の映画がつまんねぇのは、実になるワケもねぇシナリオ構造分析バカを増やすだけのおベンキョー程度なニィちゃんネェちゃんが、猿知恵猿真似ツギハギでっちあげたどうしようもねぇホンと、見せ場とダレ場の違いもわからねぇ、シャシンのシの字も知らねぇ、キャメラぶん回したりAvidで画面増やして誤魔化すだけが能な、サル以下演出家が増えたせいだわな。死ねばいい、みんなしてよォ((C)中原昌也調)
もぅ、オレっちが心底から楽しめるような、ホンモノのシャシンなんて、金輪際、二度と絶対に生まれようがない。コレが嘆かずにいられるかッ! つくづく、生まれるのが遅すぎたぜ、オレはよぉ。

唄はチャッキリ節、男はぁ〜じろぉちょぉ〜チャッキリ、チャッキリ、チャッキリな♪
「寿司を喰いねぇ、寿司を!」

次郎長三国志―マキノ雅弘の世界

次郎長三国志―マキノ雅弘の世界