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現代版“眠れる美女”の「奇妙な味」な物語
『トーク・トゥ・ハー』
03年度アカデミー脚本賞を受賞したスペインの鬼才ペドロ・アルモドバルの最新作。昏睡状態に陥るバレリーナと闘牛士のふたりの美女と、彼女らを見守る看護士と作家の男がたどる“奇跡”の物語を、世にも奇妙な語り口で描くユニーク極まりない佳品。劇中映画『小人と美女』(?)等、一筋縄ではいかないシュールな設定と味わいは、江戸川乱歩はたまたロアルド・ダールってな雰囲気もあるんで、ミステリー小説好きの方もぜひ一見!*1
……とまぁ、スペースもなかったんで、さして面白い紹介の仕方ができなかったんですが、アレにはかなり楽しませて頂きましたですねぇ。
女性闘牛士、人目はばからず泣き濡れる作家、はたまたカエターノ・ヴェローゾに舞踏、眠れる美女、童貞看護士、そして“現代のマリア”(!?)たる奇跡…等々、いかにも観客の目を引く要素を配した“奇抜な”趣向の物語世界でありながらも、それが決してこれ見よがしでない、嫌味のない悠揚迫らぬ語り口に感服。個人的には本作のアルモドバルのようなスタンスを、サム・メンデスあたりに見習ってほしい、と思いますね。アルモドバルは80年代あたりは、もろラテンノリと言うべきか、やや悪趣味志向な雰囲気もあった監督ですが、本作のお手並みは実に優雅で、見事でした。
そういや公開当時、朝日新聞の文化系コラム欄にあの作品を「変態」的と見るか否か? なんて記事が出てましたね。オレは自分自身、普段から妄想爆発(笑)なボンクラ野郎のせいか、あの看護士の行為を断罪しようなんて思わなかったですけどね。だってオレ、神様じゃないし、いくら映画中の登場人物であろうと、「裁く」ような真似なんざしたくなくて。さらに言えば、なんつってもオレ、実は坊主*2の孫(爆)なんで、クリスチャンの思考法はわかりかねますが、あの物語はとどのつまり、「神の御業(みわざ)は不可思議なり」なんて解釈でもイイんじゃないかと。
あと、あの看護士が本気でイケてるかどうか、あえて考えてみるなんてコトでも、作品の評価はわかれるかも。実際、公開前年あたりからみうらじゅん&伊集院光の「D.T.」が一部でウケたりと出版界の一部では時ならぬ<童貞ブーム到来!>なんてこともあって、「いま、童貞がキテる!」てな切り口(?)で紹介されてたりして笑っちゃったりとか。
まぁ、とにかく、スキャンダラスで、キワモノっぽい装いにしたほうが映画ファンの注目は集めやすいから、本作の宣伝はなかなか巧かったな、と個人的には思います。
ちなみに、劇中でカエターノが歌う曲はウォン・カーウァイ『ブエノスアイレス』の冒頭部でもフィーチャーされてましたね。名曲と存じます。